研究課題/領域番号 |
15K02004
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小島 優子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (90748576)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘーゲル / キリスト教の精神とその運命 / 犯罪 / 贖い |
研究実績の概要 |
「キリスト教の精神とその運命」断片に関する文献収集、およびヘーゲルとシェイクスピア『マクベス』に関する文献の資料整理を行った。 「『精神現象学』における行為論について : 人倫的行為と実体」、『倫理学年報』(日本倫理学会)を執筆し、ヘーゲル哲学においては、行為の概念は単に行為する主体に関わるだけでなく、行為者が関わる現実、人倫、実体という客体の側にも関与し、さらに客体を変容させる意味をもつことであることを提起した。申請者はヘーゲル哲学を≪行動≫と≪言葉≫による構造として読み解いており、ヘーゲル哲学は言語行為論の先駆けとして捉えられることを主張している。この研究を踏まえた上で、犯罪者が犯罪という≪行動≫を「贖い」、苦痛を長引かせることで≪行動≫は記憶という≪言葉≫の内に意味づけられ、和解の可能性が生じる過程を理論づける計画である。 「ヘーゲル学派の講義」(共訳書『ヘーゲル講義録研究』法政大学出版局、2015年)の翻訳を行い、ヘーゲルおよびヘーゲル学派が大学で行った講義について確認した。このことによって、ヘーゲル哲学における思想形成の発展を把握することができた。 またヘーゲルが『宗教哲学講義』の中で、「贖罪」について言及している箇所を検討し、ヘーゲルにとって「贖罪」が哲学的に重要な概念であることを確認することができた。 さらにアカデミー版ヘーゲル全集第1巻、フランクフルト期ヘーゲルによる「イエスの生涯」の翻訳を行っている。この翻訳作業を通じて、ヘーゲルによるキリスト教理解を整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度中は研究課題を始めるにあたって、機関内の研究環境整備を行った。平成27年度中に研究環境整備に取り組むことによって、平成28年度から研究資料を配置するスペースを確保できるようになった。平成28年度は、研究環境が整備されたので、研究スペースにおいてよりいっそう研究が進むことが期待できる。 また、計画では平成27年度にドイツに文献調査に行く予定であったが、平成27年度はドイツの研究者と連絡を取り、研究情報交換を行うことができた。このために、ドイツでの研究文献調査は平成28年度に行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツのベルリン州立図書館に「キリスト教の精神とその運命」断片に関する資料収集に行く予定である。「キリスト教の精神とその運命」断片でヘーゲルが扱っている贖罪の概念について、ヘーゲルの宗教論や行為論の観点から考察を行う。 研究成果については、日本ヘーゲル学会大会、および京都ヘーゲル読書会で発表する予定である。 京都ヘーゲル読書会では、「ヘーゲルにおける犯罪と贖い――「キリスト教の精神とその運命」を中心に(仮)」と題する発表を行う予定である。ヘーゲルによれば市民法の次元(刑罰)において犯罪者は和解を得ることはできず、キリスト教の「贖い」において愛による和解を得ることができる。ヘーゲルは実定法の立場を批判し、犯罪者が巡礼者となり悔悟して苦しむ「贖い」のうちに、全人間的な和解を見出すことを明らかにする。 研究発表成果については、執筆した論文を学会誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では、平成27年度中に研究室が配置される予定であったが、平成28年度にずれこんだために、研究室で使用するPCと書棚の購入費を次年度に回した。 計画では、平成27年度中にドイツに渡航する予定であったが、実際には平成27年度は、海外の研究者と連絡をとって研究内容の相談を行い研究内容を深めた。このために、平成28年度にドイツに渡航して、研究文献調査を行うことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に、研究室が配置されるので、研究室で使用するPCと研究資料を整理するための書棚を購入する。
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