ヘーゲルの「キリスト教の精神とその運命」断片を、ベルリン州立図書館で平成28年8月及び平成29年8月に原本を確認して分析した。リューネブルク大学で研究情報の交流を行い、研究文献の教示を受けた。 ベルリン時代の『宗教哲学講義』で、ヘーゲルは正当派の三位一体論の中で贖罪を捉えており、教団の中での悔悛とは、人間が真理と教義を自分の内に取り込む過程とみなされる。それに対して、フランクフルト期ヘーゲルに特徴的なのは、「贖い」による「犠牲」を介した「和解」である。「犠牲」は特殊を断念することによって普遍との関連を得る過程であるが、この「犠牲」はイエスの教団が実定的になるために成就しない過程を明らかにした。
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