本研究ではまず、ハイデガーが科学を実存の仕方の一つと捉えている点に着目し、彼は科学の根底には哲学が存していなければならず、研究者が自らの専門分野に即して哲学することに自覚的にならなければならないと考えていたことを論じた。次に、現存在(人間)の存在が気づかいであるがゆえに、現存在の行為は可能になるとハイデガーは考えていた点に着目し、彼は身体に対する気づかいの優位を説いていたことを指摘した。さらに本研究では痛みや自然災害を主題にして、高度に技術化した現代社会にあっても人間には制御しえないものと人間との関係について考察した。
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