本研究は、記憶の構造を統合的に理解するための「心のモデル」について考察することを目的としていた。具体的には、〈記憶の原理〉としての「連合」と〈記憶の病理〉である「解離」とを対照し、両者の関係性を検討することを行なった。そこから明らかになったのは、①「解離」は「連合」の単なる欠如態ではないということ、②むしろ、我々にとっての「心」のあり方は、本来離散的な複数の記憶体系として存在しているということ、③通常は「連合」の働きが離散的な記憶体系を統合しているが、心的外傷体験をきっかけに「連合」が機能不全に陥り、離散的な記憶体系がむき出しになる現象が「解離」ではないか、ということである。
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