研究課題/領域番号 |
15K02016
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
大石 敏広 北里大学, 一般教育部, 教授 (20442494)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境プラグマティズム / 政策の合意 / 重なり合う合意 / 多元主義 / 反根拠付け主義 / 価値の相互連関 / 日常世界 / 日常言語 |
研究実績の概要 |
平成29年度において次の研究成果を得ることができた。 (1)関西倫理学会の学会誌『倫理学研究』に、「環境プラグマティズムにおける〈政策の合意〉の概念について――ロールズの〈重なり合う合意〉を手掛かりに――」という論文を掲載することができた。この論文では、J・ロールズの「重なり合う合意」と、その修正版であるM・C・ヌスバウムの「ケイパビリティ・アプローチ」の吟味を通して、環境倫理学の主流である環境プラグマティズムという主張における重要概念である「政策の合意」について考察した。そして、ロールズとヌスバウムの主張には重大な問題点があるため、環境プラグマティズムの「政策の合意」の概念を理解するうえで、彼らの主張を参考にすることはできないという結論が引き出された。ただし、彼らの主張を吟味することによって、環境プラグマティズムの「政策の合意」の概念がいかなるものかがより明確になった。環境プラグマティズムは、価値や信念の多様性に着目し、多様な価値や信念が複雑に連関する状況の下での公共的議論による合意形成の重要性を強調する。この合意形成は困難を伴うものであるが、環境プラグマティズムは、合意形成のために連帯することを求める、関係者に対する訴えかけとして理解することができる。 (2)私は、応用倫理学の問題は、私たちが生きているこの日常世界における問題であり、この日常世界において解決されるものであると理解している。この日常世界を注視すればするほど、日常世界を超えた問題の存在が浮かび上がってくる。本年度は、日常世界を超える問題に関連して、「外的世界の懐疑論と閉包原理」という論文を書くことができた。この論文は現在、日本科学哲学会の学会誌『科学哲学』に投稿中である。この論文は、本研究の副次的業績と言うことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の「研究実績の概要」で述べたように、当初の計画通りに研究を進めることができたうえに、本研究の副次的な業績として、日常世界を超える問題について論文を書くことができたからである。
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今後の研究の推進方策 |
今後、次のように研究を進めていく。 (1)これまでの研究の全体を点検し、問題点がないかどうか吟味する。 (2)平成21~23年度と平成24~26年度の科研費による研究成果を含めて、これまでの研究成果を一つにまとめていく作業を進める。 (3)Andrew Light and Eric Katz eds., Environmental Pragmatism (Routledge, 1996)という本の翻訳を進める。この本は、環境倫理学における主流の主張である環境プラグマティズムの古典中の古典であり、まだ日本では翻訳されておらず、翻訳して世に出すことには大きな意義がある。現在複数の研究仲間と翻訳中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予定していた出張ができなかったからである。 (使用計画) 次年度は、本年度よりも多くの学会・研究会に出席する予定であり、出張計画を着実に実行する。
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