平成30年度の研究実績は次の通りです。 (1)平成27年度~平成30年度の科学研究費による研究成果を一冊の図書にまとめ、出版することができました。そこでは、研究目的、研究の学術的背景、研究の着想へと至った経緯、研究によって明確にした論点、研究の特色と独創性と意義などについて説明し、発表論文、研究会発表、講演会発表などについての概要を掲載しました。本報告書は特に、一般の人に読んでもらうことを目的としているため、一般の人にも理解できるように平易な記述を心がけました。 (2)まだ出版されていませんが、Environmental Pragmatism (edited by Andrew Light and Eric Katz)という本の翻訳を数人の研究仲間と行いました。この本は、環境倫理学の古典中の古典です。現在、監訳者による翻訳原稿のチェックが行われています。 (3)私は、これまでの研究によって、社会において生じている諸問題を、問題が生じている状況の中でその問題に直面している行為主体の視点から解決していくという実践的方法論の重要性を痛感しました。応用倫理学は哲学の一部門ですが、この応用倫理学を通して哲学は現実世界とつながっています。応用倫理学は現実世界を対象とする限り、日常言語の在り方に着目しながら現実の社会問題の解決に携わっていかなければなりません。しかし、哲学には、日常言語の世界を超えていこうとする側面があります。日常言語について考えるということは、日常言語の超出を垣間見ることであり、日常言語の超出について考えるということは、日常言語の在り方を確認することではないでしょうか。以上の発想のもとに本研究の副次的成果を得ることができました(以下の報告書に記載された成果以外に、「外的世界の懐疑論と日常言語の超出」があります。現在、この論文は、査読結果を基に修正して学術雑誌に再投稿中です)。
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