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2016 年度 実施状況報告書

無限の構造分析と力学系の概念分析-ニュートン、ライプニッツから作用素環論まで

研究課題

研究課題/領域番号 15K02017
研究機関清泉女子大学

研究代表者

原田 雅樹  清泉女子大学, 付置研究所, 教授 (90453357)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード概念の哲学 / 作用素環 / フォン・ノイマン環 / 無限 / 力学系 / ジュール・ヴュイユマン / ガロワ理論
研究実績の概要

Leibnizの「無限小」に依拠した微積分と、Newtonの力学系に基づいた流率法の発想の違いとその間の関係性を明らかにしながら、それがvon Neumann環論の中にいかにあらわれているかを明らかにすることを目指した。
ガロワ群の概念の誕生を哲学的に明らかにすることで、対象の捨象による操作概念の顕在化させたJules Vuilleminの著作Philosophie de l’Algebreについて、「ヴュイユマン『代数学の哲学』とスピノザ『エチカ』の幾何学的秩序」(『主体の論理・概念の倫理』、以文社、2017所収)を、私は2016年度に執筆した。本研究課題の一つは、無限概念が関数論と力学系とにおいていかにあらわれ、統合化されているかを解明することである。作用素環論においてCocycle differencialという関数解析に力学系の視点を取り入れた概念によって明らかになった無限の構造の中に、ガロワ群と類似の構造が見いだされるということがわかってきたが、このことは、Vuilleminの思想の延長という意味でも非常に興味深いことである。
また、20世紀のフランスの哲学者であり、Vuilleminにも大きな影響を与えたAlbert Lautmanの論文を他の研究者と翻訳中である。Lautmanの思想はプラントン主義的であり、弁証法が非常に重要な概念となっている。数学の概念においては、例えば数論において代数学的な側面と解析学的な側面が弁証法的に干渉しながらより本質的なイデア的なものに向かっていくという。この代数学的な側面と解析的な側面の干渉という考え方は、本研究にとっても重要な考え方である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Alain Connes は、Cocycle differencial (非可換Radon-Nikodym定理)という概念を導入し、無限次元を対象とする関数解析に代数的構造を入れることを出発点として生まれたvon Neumann環のweightを時間発展的に変換させることにより、III型von Neumann環の分類を可能にした。これは、力学系の考え方をvon Neumann環論に統合することにより、III型von Neumann環という作用素環における非常に複雑な無限次元の構造を明らかにしたことを意味する。III型von Neumann環の分類が成功したことで、場の量子論の数理構造にあらわれる作用素環はIII1型であることがわかり、さらに現在では、III1型von Neumann環を、物理学の弦理論と深い関係にある共型場理論に用いることが試みられている。起源をやはり弦理論に持ちながらも数学的には純粋に代数的な位相を持たない頂点作用素代数とIII1型von Neumann環との間に共通の構造が見いだされつつある。また、II1型von Neumann環と同様、III1型von Neumann環のsubfactorに数論のガロワ理論に類似の構造があることが明らかになってきている。
Jules Vuilleminの著作Philosophie de l’Algebreの発展の一つとして、作用素環論を用いつつ数学概念の生成のあり方を考えていきたい。また、Lautmanは数論において、代数学的概念と解析学的概念の干渉を明らかにしたが、作用素環論においても代数学、解析学、力学系、数論などにおける諸概念が生き生きと干渉していることが明らかになった。

今後の研究の推進方策

平成27、28年度の研究においては、Newton的「力学系」とLeibniz的「無限小」に遡るということはできていない。また、ConnesはIII型von Neumann環の構造分析をするにあたって、超準解析に触発されたが、これはライプニッツ的「無限小」と深い関係を持っている。これらの研究をまだ行っていないので、そのあたりの概念史的研究を行う予定である。
また、無限次元の構造解析の一つにvon Neumann環のsubfactor理論があるが、そのガロワ理論とのつながりを勉強しながら、哲学者Jules Vuilleimのガロワ群に対する哲学的分析や、Albert Lautmanの数論における代数学と解析学の干渉を通した弁証法についての哲学的考察につなげていきたい。

次年度使用額が生じた理由

2016年3月に研究資料として書籍を購入したが、清算を次年度に持ち越したため。

次年度使用額の使用計画

研究資料としての書籍の購入

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 主体の論理・概念の倫理―20世紀フランスンのエピステモロジーとスピノザ主義2017

    • 著者名/発表者名
      上野修、米虫正巳、近藤和敬、中村大介、朝倉友海、上尾真道、木島泰三、坂本尚志、信友建志、原田雅樹、藤井千佳世、Hourya Benis-Sinaceurほか
    • 総ページ数
      133-160
    • 出版者
      以文社

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公開日: 2018-01-16  

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