医学研究者の追加的ケアの問題に関して、現在その有力な考察枠組と目されている部分委託モデルに着目し、その有効性の検証と限界の画定を試みた。その結果、以下の三点が明らかとなった。(1)とりわけ先進国での医学研究の過程で発生する偶発的所見の問題などに関しては、部分委託モデルは有効な理論モデルとなりうる。(2)その反面、開発途上国での医学研究の過程で発生する追加的ケアの問題に関しては、部分医学モデルは医学研究者の責務の全体像を描き出すまでには至っていない。(3)健康潜在能力パラダイムと呼ばれる健康正義の理論は、追加的ケアの問題に関して部分委託モデルを補完・強化するものの、代替アプローチにはならない。
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