敦煌文書中に保存された禅宗史書『歴代法宝記』について、国内外の刊行物に計7本の論文を発表し得た。一連の考察において、『歴代法宝記』は、教団史としては「白衣」や「居士」と呼ばれる半僧半俗の修道者の増加と、儀礼や戒律にとらわれない実践のありようを背景とし、思想としてはそうした実践を「無念」の体現として積極的に意味づける思潮の中で編纂されたことを論じた。 同時に本課題は、「神会語録」や『壇経』における「無念」思想が『歴代法宝記』においては前述の教団史的背景により大きく変容していたこと、また『首楞厳経』の受容史において、本書は前塵と仏性との弁別を語る際に多く『楞厳経』を引用していたことを解明した。
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