最終年度においては、「『淮南萬畢術』拾遺(その三)」(東洋古典学研究43号)及び「『淮南萬畢術』拾遺(その四)」(東洋古典学研究44号)を発表した。(その三)では『如意方』の中に見える『淮南萬畢術』と同質のもの(42条~80条)を、(その四)では『霊奇方』(全36条)と『得富貴方』(全6条)と同質のものを、それぞれ抽出する作業を行った。 そして、本研究のまとめとして、九州中国学会平成29年度大会(5月13日、於佐賀大学)において「中国古代呪術系医療の一端 ―「驚」の予防を中心に―」と題する研究発表を行い、その成果を査読付き雑誌『東方宗教』第130号(日本道教学会)に「呪術系予防医療の一端 ―『淮南萬畢術』解析試論―」として掲載した。本研究が申請当初に予定していたものは、本論文を以て概ね完了し得たと言える。 以上の実績により、中国古代における呪術系医療行為の一端(とくに「驚」の予防)を明らかにすることができると同時に、本研究が次にアプローチしなければならない諸問題を明確にすることもできた。 最終年度における本課題への研究実績は以上であるが、さらに上にも言及したように、今後の課題を明確化することも同時に行った。特に呪術系医療の中でも心の病や心を操作するものが今後の課題として浮上した。これは、通常「心」を言わずもがなのものとして処理してきた中国古代思想史研究に一石を投ずるテーマであり、「心」という文字が使用される夥しい文献の再検討を要するものとなる。
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