研究課題
今年度は、主に①アルチャタ作『論証因一滴論注』の所説を引用するジャイナ教文献の考察と、②その他の仏教論書に紹介されるジャイナ教学説とその批判との比較を行った。①については、『論証因一滴論注』の当該箇所が引用される後代のジャイナ教文献について、すでに知られているものを含めて網羅的に調査し、そこに見られる平行箇所を『論証因一滴論注』の本文と比較し、異読を収集・記録した。『論証因一滴論注』からの引用がすでに知られているものとしては、『論理の決定注解』『相対論の宝蔵』『生起等の確立』『ダルマに関する集成注』等があるが、これらの文献の当該箇所の洗い出しと内容の精査を行った。また上記のジャイナ教文献を読解し、アルチャタの見解が後代のジャイナ教徒によってどのように再批判されているかを考察した。その際、ジャイナ教徒の再批判がジャイナ教の思想的立場とどのように関係するのかについても明らかにした。②については、仏教文献のうち、ジャイナ教の多面的実在論が紹介及び批判されている文献の解読を進めた。特に、アルチャタやジターリとの関連も指摘されているシャーンタラクシタによる『真理綱要』とその弟子カマラシーラによる『真理綱要注』の中の「相対論の考察」章を読解し、『論証因一滴論注』のテキストと比較した。また、アルチャタ、シャーンタラクシタ、カマラシーラ、ジターリといった仏教論理学者がいかなるジャイナ教文献を情報ソースとしていたか、また特定のジャイナ教徒が反論者として想定されていたとするとそれは誰であったのか等の問題の解明に取り組んだ。さらに、ジャイナ教思想を紹介・批判する仏教論理学者間の思想的影響関係についても考察した。以上の研究の成果については、大谷大学にて開催されたジャイナ教研究会において口頭発表を行った。
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インド学チベット学研究
巻: 第22号 ページ: -
Journal of Indian Philosophy
巻: vol. 46-3 ページ: 437-454
10.1007/s10781-017-9344-0