研究課題/領域番号 |
15K02048
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
齊藤 隆信 佛教大学, 仏教学部, 教授 (20367981)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 隋代仏教 / 国家仏教 / 彦琮 / 菩薩僧 / 仏教復興 / 漢訳 |
研究実績の概要 |
研究初年度における計画としては、彦琮伝の前半を読解し、『通極論』の読解と訳注の作成、そして現地調査(隆堯県)を行い、学会での研究発表とその成果を論文として公開することであった。この計画や目的に従って、以下の成果を実績として示す。 ①まず仏教史学会の入門講座においては「無名の彦琮は有名だった―中国仏教研究の死角―」と題して口頭発表を行った(6月20日、大谷大学)。今となっては無名となってしまっているが、実は当時としては第一線で活躍していた僧侶がいたことを明らかにすることで、歴史学は無名人を著名人にしたり、逆に著名人を無名にすることもできる危うさを孕んでいることを指摘し、仏教入門者への仏教史研究のおもしろさを伝えた。 ②現地調査として中国河北省隆尭県に赴いて、彦琮墓とそれに関連する資料と遺蹟を調査した(9月11日~14日)。すでに墓は取り壊されて現存していなかったが、彦琮が現在でも現地の歴史的な著名人として知られていることが確認できた。 ③第66回日本印度学仏教学会において「釈彦琮の出自と著作」と題して研究成果を口頭発表した(9月20日、高野山大学)。彦琮は代々高級官僚を排出している趙郡の李氏一族に生まれた。そしてそれによって後の国家仏教の担い手となることが可能だったことを論証した。この口頭発表は『印度学仏教学研究』(64-1、pp.17-25、12月)において掲載されている。 ④彦琮関連の写本デジタルデータの調査と蒐集を行った(国際仏教学大学院大学、2月29日~3月1日)。これにともなう調査に関連して、これまで知られることのなかった彦琮が作成した経典の序文が一部だけ今なお現存していることが判明した。そしてその美文である序文の読解を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的と計画はもちろんのこと、初年度は彦琮伝の後半にも差し掛かって研究を進めることが出来た。また彦琮の仏教観が述べられている『通極論』の訳註についても、京都大学人文科学研究所の成果の見直しを若干進めることができた。現地調査では残念ながら彦琮の墓が破壊されてはいたが、思いがけず関連する遺蹟を確認することができた。 当初は予期していなかったこととして、良い意味で新たな資料を発見できたことである。彦琮が作製した数多くの経典の序文は、これまで一点のみが現存していることはわかっていた。しかし、その内容からは果たして確実に彦琮の作品であるのか疑わしいものであったが、今回の調査によって、それが別人が作った序文であり、彦琮の自作の序文は別にあったことが発見できたことである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の見通しとしては、まずは彦琮伝の後半を解明することが急務である。これによってはじめて隋代仏教の中の彦琮の役割が鮮明になるからである。また『通極論』の訳注の作成と、文学作品でもある『浄土詩』、そして唯一残されている経典の序文の読解と訳注を作成する。現地調査としては中国河南省洛陽市に訪問して、彦琮が活動の拠点としていた上林園翻経館の場所を確定する予定である。さらに昨年度と同じく、これらの研究と調査による成果を学会において口頭発表するとともに、関連する雑誌等に論文または報告文として掲載することになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料整理・データ入力としての3月のアルバイト代(810円×29時間=23,490円)が、執行期限に間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に執行する。
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