本課題では、大谷探検隊が新疆省ウイグル自治区トルファン地区より将来したウイグル語仏典の総合目録作成に向けた基礎データの構築を目指すものである。本年度も引き続き、写本の基礎データの収集につとめた。 大谷探検隊資料は極小断片で、文字も数行を保存するものがほとんどであるが、近年の関連資料、すなわちベルリンとサンクトペテルブルグに保存されるウイグル語仏典資料の研究の進展により、この十年で蓄積されたテキストデータの総量は、以前にくらべ飛躍的に増えている。それらを利用することにより、極小の大谷探検隊資料でも内容を否定することが可能である。これらを利用することによって内容を新たに比定することができた断片資料は数十件を数える。 2017年11月にベルリンのベルリン=ブランデンブルグ科学アカデミートルファン研究所、2018年2月にはサンクトペテルブルグの東洋文献研究所を訪問し、ウイグル語仏典資料を閲覧調査に従事した。この調査により、あらたに大谷探検隊資料との関連性を見出すことができた。ベルリンにおいては、トルファン研究所が主催する研究会(Collegium Turfanicum)において成果報告をし、情報を共有するとともに、トルファン研究所所蔵のウイグル語仏典のカタログ化とテキスト化の研究状況について最新の情報をえることができた。 今年度、国内および国外で実施した調査において収集されたデータは、大谷探検隊将来ウイグル語仏典総合目録作成にとって大きな進展であった。
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