研究課題/領域番号 |
15K02050
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研究機関 | 公益財団法人中村元東方研究所 |
研究代表者 |
田中 公明 公益財団法人中村元東方研究所, その他部局等, 専任研究員 (00171744)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 曼荼羅 / チベット仏教美術 / サンスクリット写本 / ガンダーラ美術 / インド密教 |
研究実績の概要 |
昨年2月に、インド仏教美術の調査を行い各地で成果があったが、新年度に入ってからは、複数の大学・研究機関から講義・学術講演を委嘱されたため、長期の現地調査ができなくなった。そこで8月に雲南省大理市剣川県で開催された国際学会に参加したのを機に、滞在を延期して、麗江とその周辺地域でチベット仏教美術の調査を行った。ところが10月17日に代表者の母親が逝去したため、同月に予定していたネパール調査は中止せざるを得なくなった。ネパールについては昨年12月に再調査を行い、いくつかの成果があったが、同時に予定していたシッキム調査は、受け入れ機関側の都合で急きょ中止を余儀なくされた。そこでカトマンズからコルカタに向かい、インド博物館、インド国際大学(シャーンティニケータン)、コルカタ大学アストッシュ博物館、ベンガル・アジア協会の調査に切り替えた。さらに2月には、英国大英博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館、オックスフォード大学、ロンドン大学SOASなどを訪ね、収蔵品の写真撮影と公式写真(デジタル)の購入に加え、情報収集も行った。 申請当初から計画していた「藤田アーカイブス」(仮称)は、副会長を務める『チベット文化研究会報』に連載していた藤田弘基氏撮影のペシャワール博物館所蔵のガンダーラ美術のデータベースが完結し、本年1月からニューデリー・チベットハウス美術館所蔵のチベット仏教美術の連載を開始した。 東京大学東洋文化研究所紀要などに連載した『安立次第論』のローマ字化テキストの研究(日英二カ国語版)を、昨年8月に(有)渡辺出版から刊行した。全300部のうち180部の印刷費を科研費から支出し、非売品として国内外の大学・研究機関・研究者に寄贈した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
横浜桐蔭大学のペマギャルポ教授(当時)の委嘱で引き受けたシッキム・ナムギェル研究所のチベット美術調査は、先方の都合で29年度に延期になったが、それ以外の研究調査は、順調に進んでいる。また海外調査による情報収集で、当初予定していなかった新資料を入手するなど、予想以上の成果をあげたものもあった。その成果については、最終年度である29年度中に、複数の学術雑誌で報告する予定で、すでにいくつかの論文・調査報告は、原稿を送付している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は3カ年の最終年度となるため、3年間の成果の公開・出版に力を入れることにしている。すでにサンスクリット写本『普賢成就法』の日英二カ国語版モノグラフは、昨年『安立次第論』を刊行した渡辺出版での出版が決定している。また一昨年のラジャ寺の砂曼荼羅調査は『密教図像』誌に、本年4月のシャキュン寺の砂曼荼羅と壁画調査の成果報告は昨年非常勤講師を務めた『高野山大学大学院紀要』に発表する予定である。いっぽう藤田アーカイブス関係では、本年11月にペシャワールで開催予定の国際学会に参加し、ペシャワール博物館所蔵作品の中で、不明だった美術品の作品番号を確認したいと考えているが、治安上の問題があるため、慎重に検討を進めている。また本年より、東京国立博物館の客員研究員を委嘱され、館蔵のチベット・ネパール仏教美術の整理を担当することになった。これについては、同館のMUSEUM誌に成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度の報告で記したように、平成28年10月18日に代表者の母親が死去し、当初予定していたネパール調査を中止したことに加え、いくつかの研究計画を一時中断せざるを得なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年12月に、受け入れ研究機関側の都合で延期したシッキムの再調査あるいは、藤田アーカイブスの作品番号確認のためのペシャワール訪問などに使用する予定であるが、治安上の問題により断念せざるを得なくなった場合には、現在計画中の『普賢成就法註』のモノグラフに加え、さらに日英二か国語版のサンスクリット写本研究を、もう一冊刊行する計画を進めている。
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備考 |
田中公明の個人HP 著書・論文の紹介と正誤訂正、学術協力した展覧会・テレビ番組、 講義・講演等の紹介を含む。
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