研究課題
平成29年度はコプト語関連のめぼしい国際学会が開催されなかったため、関連する学会研究発表は行なっておらず、研究発表と関連しない形でコプト語関連の研究は進められた。但し、前年度報告書で触れたように、この研究は現在に至るまで研究上の難所にぶち当たっており、いくつか光明は見えつつあるものの、突破口を見いだすには未だ至っていないのが現状である。これに対してシリア語関連では、ベルリンで行なわれたSBL International Meetingに参加してシリア語関連の研究発表を行なった。昨年度に引き続きシリア語の福音書伝統に関するものであるこの研究発表自体は、無論昨年度より若干の進捗を見たとはいえなお荒削りな段階にはあるが、ギリシア語とシリア語のキリスト教的伝統(特に聖書文書の伝統)の交錯に関する興味ぶかい問題に接しており、今後さらなる展開が期待できる。既に前年度報告書で触れたように、この問題の研究の深化を図るべく、シリア語キリスト教の初期の重要著作家であるエフレムにおける聖書(福音書)引用の問題について研究論考を公刊しており、同様に初期の重要著作家であるアフラハトにおける聖書(福音書)引用の問題についてさらに研究を進める必要があることが明らかになってきた。そしてこのテーマに関連する研究発表を、2017年9月にイタリア・トリノで開催された国際マニ教学会で行なった。但し、マニ教の創始者マニの聖書知識の程度を問題としたこの発表はなお極めて荒削りな段階にあり、発表時には幾人かの学者から厳しい批判を受けもした。そこで今後は、同学会の会議録への論文掲載に向けて補完的な検討を行ない、かつ上述のようにアフラハトにおける聖書(福音書)引用の問題も追加的に検討することによって、より一層足場固めをした形で論考作成にこぎつけたいと考えている。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Bulletin of the Graduate School of Letters, Hokkaido University
巻: 152 ページ: 1-36
http://doi.org/10.14943/bgsl.152.l1
キリスト教学(立教大学)
巻: 59 ページ: 65-84