研究実績の概要 |
エジプトはイスラームを主要宗教とする国々の代表的国家のひとつであるが、その一方で、総人口約9,000万人の10-15% にあたる900万人~1350万人前後をコプト・キリスト教徒(コプト正教徒)が占めている。コプト正教会は、福音記者である聖マルコにより西暦42年頃に設立されたといわれる、東方諸教会に属するキリスト教の一宗派である。エジプトでは7世紀に到来したイスラームよりも古い歴史を持つとともに、キリスト教世界のなかでも、ローマ・カトリック、東方正教会、プロテスタントという三大宗派とは一線を画す宗派である。 1950年代以降、エジプトでは、信仰を問わず、北米、欧州、豪州への移民が増加しており、コプト正教徒もこれら地域に多くのディアスポラ共同体を形成している。研究代表者は2011年よりフランス、2013年よりカナダ、2017年より日本のコプト・ディアスポラ共同体のフィールドワークを行っており、彼らが民族(エジプト人、すなわちムスリムとコプト・キリスト教徒から成る人々)よりも宗教(コプト正教会に属する人々)を紐帯とする共同体の形成を行い、それが強固な絆をもって機能していることを明らかにした。 2018年度は、カナダ、モントリオールの聖ジョージ聖ヨセフ コプト正教会に所属するコプトの、宗教共同体とホスト社会それぞれへの適応状況について明らかにするために、約20日間にわたりコプト家庭に住み込み、参与観察やインタビュー調査を行った。
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