研究課題/領域番号 |
15K02055
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
冨澤 かな 東京大学, 附属図書館, 准教授 (80503862)
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研究分担者 |
豊山 亜希 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (40511671)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宗教概念 / 宗教表現 / 植民地 / 近代インド / スピリチュアリティ / ネオ・ヴェーダーンタ / 近代墓地 / タイル |
研究実績の概要 |
平成27年度は当初計画通り、12月12-13日開催の国際ベンガル学会を核に研究を進めた。本学会では、The Dynamics of Religion in Modern Bengal I-IV として4つのパネルを編成した。研究代表者である冨澤と、研究分担者である豊山亜希(以下すべて敬称略)、研究協力者である間永次郎、平野久仁子との協議のもとパネル編成を進め、最終的に冨澤、豊山、平野を含む計13名からなる4パネルで、本研究事業の目的にふさわしい発表と議論がなされた。参加者のうち、ストックホルム大学のフェルディナンド・サルデラ、ベンガル・アカデミーのサイモン・ザカリアは本科学研究費により招聘した。他に、海外から台湾大学の李宥霆とラジュシャヒ大学のモストファ・トリクル・アフシャン、国内からは福内千絵、稲賀繁美、スワーミー・メダサーナンダ、澁谷俊樹、臼田雅之、置田清和の参加を得た。美術史研究、ネオ・ヴェーダーンタ研究、バウルやガジャンの人類学的研究、ヴァイシュナヴァ研究等、多様なテーマ、方法論の発表がなされたが、一貫して近代ベンガルにおける「宗教」なる現象と概念の問い直しが行われることとなり、大きな成果を得た。13日の学会終了後には、研究分担者・協力者4名で会合を持ち、活動方針について協議した。 12月18日には冨澤が所属する東京大学附属図書館U-PARLとの共催で、ワークショップ “Archiving of Asia in Asia”を開催し、上記のサルデラを講師に、他に東京外国語大学の足立享祐と東京大学の宮本隆史をコメンテーターに迎えて、インドにおける宗教関連の貴重資料のデジタル化とオープンアクセス化のプロジェクトをモデルに、アジア研究における資料の保存・利用・共有のあり方について議論した。 3月15日には冨澤、間、平野で会合を行い、特に最終年度の国際学会参加を焦点に、今後の研究活動について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度は上記のとおり、当初計画どおりに国際ベンガル学会を核に研究活動を展開し、四つのパネルでの発表・討議を無事実現することができた。この活動には本研究活動のコアメンバーとなっている冨澤・豊山・間・平野が全員参与し、さらに国内外の多くの研究者からの協力と、本研究テーマへの理解、賛同を得ることができた。本研究事業の最大の課題は、宗教学の枠組みに閉ざされある種の閉塞状況に陥っている近代的宗教概念論を近代インドの文脈で多様なディシプリンと幅広く共有し、近代インド研究と宗教研究双方の自己批判の行き詰まりを打破する可能性を探ることである。その意味で、多くの研究者からこの企図に対する理解と参与を得た意義は極めて大きいものと考えている。 27年度はコアメンバーそれぞれの従来の研究を持ち寄り、学会の場で他の研究者と共有するかたちで進み、想定どおりの成果を得たので、28年度以降はそこから各人の研究に新たな展開を得るべく、コアメンバー間の研究の共有の機会をさらに増やす必要があろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の活動の最大の節目として、最終年度の国際学会参加を検討している。現在最有力と考えているのは、29年7月20-23日にチェンマイで開催されるICAS10(The 10th International Convention of Asian Scholars)であるが、他に、AAS in Asia、BASAS、AARなども並行して検討している。28年度は、この国際学会での成果発表に向け、新たなパネルを編成しアプライを行うとともに、国際ベンガル学会パネル参加者の協力も得つつ、研究のコアメンバーである冨澤、豊山、平野、間の間で、相互の研究成果を共有し、各分野を連携させつつ研究を進める。大きい方向性としては、冨澤、平野、間を中心とする宗教言説研究と、豊山と冨澤を中心とする形象的な宗教表現研究があり、それぞれを方法論・学史批判の検討と連動させつつ展開することとなるが、両方向を分離することなく同時に展開し、常に共有、討議を重ね、分野による議論の乖離を埋めることを重視する。 上記の研究活動を進めるとともに、研究のプロセスと成果を適切に保存・共有することも重視している。冨澤の所属先である東京大学附属図書館周辺で検討が進んでいるオープンサイエンスの動きと連動し、まずモデルケースとして、冨澤によるインドのイギリス人墓地研究で蓄積されてきた画像とデータの一部公開を目指すこととする。ここにはインドのクリスチャン・ベリアル・ボードや、イギリスのBACSA(British Association for Cemeteries in South Asia)など、複数のステイクホルダーが関わっており、その調整が最初の課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、国際ベンガル学会への海外研究者招聘費用として65万円を計上していたが、負担を予定していた、個人アプライからのパネル参加者3名分の滞在費用一部支出が学会の予算の都合により不要となったことと、人件費・謝金支出が年度内に生じなかったことで、支出額が減ったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に国際学会へのパネル参加を計画しているため、その旅費として利用したいと考えている。海外からの発表者招聘の可能性も検討している。
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