研究課題
本研究では、いわゆる近代的宗教概念批判の意義を受け止めつつ、その行き詰まりやジレンマに抗することを意図し、近代インドの言説・形象双方の宗教表現を対象に、近代的宗教概念それ自体に、すでに非西洋世界側の主体性が刻まれていることを明らかにし、議論に新たな位相をひらくことを目指した。研究協力者の平野久仁子、間永次郎と代表者の冨澤かなは、近代インドの宗教言説が、伝統と近代性の問題や他者の存在をどう受けとめつつ成り立たってきたか、分析を進めた。平野はヴィヴェーカーナンダを中心に、近代ヨーガ論と、近代アジアの仏教論の展開を跡づける研究を行った。間はガーンディーの哲学、特にブラフマチャルヤ論の成立と全体像をインドの思想伝統やネオ・ヴェーダーンタとの関係に着目しつつ分析する研究を進めた。冨澤は近代インドでspirituarityとsecularityに関わる語彙がいつどう用いられてきたか、量的分析の可能性に着目しつつ分析を進めた。形象表現に関しては、研究分担者の豊山亜希が、インドの近代絵画史の伝統/近代の対立図式の見直しを行うとともに、近代インドにおけるマジョリカタイルの普及と空間表現の変容が、広域的な経済の展開とともに生じてきた様を分析した。また冨澤は、近代インドの英人墓地の墓石意匠の複雑な成り立ちの研究を進めた。27年度には国際ベンガル学会で、近代ベンガルの宗教の動態を4パネルで多面的に検討し、国内外の多くの参加者と問題意識を共有し、最終年度には、国際シンポジウムとセミナーの開催と、国際学会への参加を行った。その中で、宗教/世俗をめぐる言説が、インドで主体的に展開していたこと、そして同時に、これを再統合し、あるいは対立軸をずらす論理展開が強く見られたことが確認され、また新たな経済環境の元、東/西、伝統/近代の対立を超えたグローバルで新たな形象表現が成り立ち展開していたことが確認された。
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Proceedings of History of Consumer Culture 2017 Conference: Objects, Desire and Sociability
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