本研究は宗教メディアに着目して近代日本宗教史を再検討するものであり、またそれを近代と宗教というより大きな問題につなげて考察していこうとするものである。 2018(H30)年度の具体的な成果として、最優先課題として設定した『明教新誌』の目次データ整備を引き続き進めた。2018年5月に明治12~21年までのデータを公開し、また記事の執筆者の同定を進め、「著者(整序)」欄を追加している。また明治22~24年までについて、原データを得て、公開に向けた修正作業を行った。これについては現在最終調整中であり、後日公開予定である。 研究成果として、論文を2本発表し、口頭発表を5回(うち国際学会1回)行った。論文「『明教新誌』解題:創刊から明治21年頃までを中心に」では、本研究の成果の一つのまとめとして、明治21年頃までを区切りとして『明教新誌』の解題を試みた。また論文「明治前期における仏教者のキリスト教観:『明教新誌』を中心に」では、『明教新誌』の目次を活用して、明治前期に仏教者がどのようにキリスト教を見ていたのかについて論じた。仏教者がキリスト教を競合する相手として批判的に見ていたことは前提として、しかしそれでもなおキリスト教の組織や教えの説き方などについては、参照せざるをえないというような認識も述べられていたことを、『明教新誌』上の言及を参照しながら論じた。 口頭発表については、いずれも『明教新誌』目次を活用しながら、『明教新誌』の基本的な内容について確認したり、明治中期の仏教改良論への展開について検討したり、あるいは仏教徒のキリスト教への言及に考察を加えたりした。また少し視点を広げて近代日本の宗教史に接続させ、高橋吾良の仏教批判や他の宗教についての議論について検討したり、明治前期の議論から井上円了を経て清澤満之へと至るような仏教論の展開について考察を加えたりした。
|