本年度は、これまでの研究成果について、3つの国内学会で発表し、2本の論文にまとめた。 論文については、まず、極東ロシアの日本海沿岸に位置する沿海地方にフォーカスして、宗教文化教育と愛国心教育との関連について、これまでの資料収集・分析をもとにまとめた(「ロシアの愛国心教育と宗教文化教育:2000年代前半の沿海地方における取り組みを中心に」『清泉女子大学紀要』所収)。また、宗教文化教育と深く関連する政教関係について、歴史的位相のもと明らかにするために、ソ連時代に遡って研究した成果をまとめたのが「ソ連時代のライシテと「戦術」としての宗教実践」である(『世俗の新展開と「人間」の変貌 』所収)。学会は、宗教社会学を専門とする研究者の多い「宗教と社会」学会、そして国内外の宗教研究に従事する研究者による日本宗教学会、そして政治・経済・文学など様々な領域を研究対象とする、ロシア・中東欧研究者の多く集まるロシア東欧学会で研究成果を問い、多くの示唆深い指摘を得た。 また数年にわたり、ロシアでの現地調査を行えずにいたが、本年度はロシア連邦の首都モスクワに滞在し、課外・学校外の教育コミュニティについて調査を行った。 本研究期間は、新型コロナウイルスの世界的流行や2022年以降のロシアによるウクライナへの全面侵攻などにより、申請時点での現地調査の計画を大きく変更することとなったが、そのような制約の中で逆に、宗教文化教育をめぐる状況について、さまざまな角度から照射する必要性に気づくことができたと考える。
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