研究課題/領域番号 |
15K02063
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
寺戸 淳子 専修大学, 文学部, 兼任講師 (80311249)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宗教学 / 人類学 / 倫理学 / 障害者 / 共生社会 / 平和学 / 市場経済 / フランス・カナダ・日本 |
研究実績の概要 |
平成27年度は主にフランスで調査を行った。 1.8月17日から9月15日まで、〈ラルシュ〉共同体(知的障害者とアシスタントが共に暮らすグループ・ホーム運動)の一つである〈ラ・ルベルリー〉共同体(フランス中部の都市アンジェ近く)で、ホームの一つに住み込み参与観察を行った。過去2年間にカナダのトロントとフランスのトローリー・ブルイユの〈ラルシュ〉共同体で行った調査同様、日常生活で交わされる会話・言動を重視した調査を行うと同時に、他のグループ・ホームのメンバーやアシスタント、事務局スタッフ、その他関係者へのインタビュー、および、さまざまな就労活動やサービス部門の調査を行った。農村地帯に位置するこの共同体は、当初は数家族を中心に自給自足生活をおくり、現在も収入源としてブドウ栽培およびワイン製造(2015年秋まで養鶏も)を行っているため、人々の関係性や活動内容・意義の新たな一面を調査でき、今までの共同体と比較する上で重要な成果を得ることができた。また労働・経済活動と平和という主題をめぐり、さまざまな立場の参加者たちから貴重な話を聞くことができた。 2.9月16日から20日まで、パリで〈ラルシュ〉の「平和貢献活動」としての意義について以下の調査を行った。 (1)〈ラルシュ〉共同体国際本部で紹介された、〈ラルシュ〉フランス本部責任者へのインタビューを中心に、彼が中心となって企画した「暴力」をめぐるシンポジウムなどについて調査を行った。 (2)〈ラルシュ〉共同体創設者ジャン・ヴァニエが共同創設者である〈インテルコルディア〉(国内外で社会貢献活動に参加する若者を、精神面でサポートするメンター制度)の調査の一環として、設立当初から参加しているメンバーへのインタビューを中心に調査を行った。 現地調査と並行して、ジャン・ヴァニエとヘンリ・ナウエンの著作を中心に、現在までに収集した資料の分析を継続して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、実施計画に記していなかったフランスの〈ラルシュ〉共同体の調査を行い、大きな成果を上げることができた。計画変更の理由は、予定していた「〈ラルシュ〉共同体創設50周年記念行事」である「全コミュニティーの創設者へのインタビュー企画」のサポートと調査が、共同体側で企画が進展しておらず、できなかったためである。このため〈ラルシュ〉国際本部での調査は計画通りには進まなかったが、今までとは異なるタイプの共同体を調査したことによって、〈ラルシュ〉共同体創設者ジャン・ヴァニエの述べる「平和」と「暴力」について考察するための新たな視角と、新たな人とのつながりを得ることができた。調査の日程上、日本宗教学会学術大会での研究発表はできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記「〈ラルシュ〉共同体創設50周年記念行事」については、進展状況をみながら調査を進める。この「全コミュニティーの創設者へのインタビュー企画」に参加できなかった場合は、静岡の〈ラルシュ〉共同体や現在創設準備中の新たな共同体の関係者などに独自にインタビュー調査を行う。また、できるだけ多くのタイプの異なる共同体の調査を行うため、カナダとフランス以外の国、特にアジアの共同体で調査するための予備作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、参加および調査を計画していた「〈ラルシュ〉共同体創設50周年記念行事」の企画が、企画者である共同体側で進展していないため、その調査で使用する予定だった額の残額を次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記企画が進展した場合は、当初の計画通りその調査に用いる。企画が進展しなかった場合は、現在までに調査した共同体とはタイプの異なる共同体の現地調査のために用いる。
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