申請者は、本研究の目的を達成するために具体的なサブテーマとして「在華プロテスタント宣教師の不平等特権認識の変遷について」「近代中国における『信教の自由』概念の導入と受容」および「教育権回収運動とキリスト教教育の自由」を掲げ、研究をおこなってきた。2017年度は特に二つ目の研究テーマ「近代中国における『信教の自由』概念の導入と受容」について資料の読み込みを行い、現在それらの成果を論文にまとめるべく執筆を進めているところである。 申請者は、信教の自由の問題を法制度の観点からではなく、あくまでもキリスト教史研究の立場から、教会と国家の問題と関連づけながら考察してきたが、これまでの研究から差し当たって言えるのは、20世紀前半の中国の教会論は、欧米からの自立を論じることに忙しく、教会と国家の問題には必ずしも強い関心を示していないこと、したがって信教の自由をこの問題と関連づけた議論がかなり低調であったことである。 申請者は2017年3月に満洲国における宗教統制と信教の自由に関する論考を発表しているが、2017年度の課題としたテーマの追及を通して明らかになったもう一つの重要な点は、中華民国期の宗教管理の実態のみならず、中華民国における「信教の自由」の認識と満洲国政府の認識とは地続きであったことである。法制が未整備の状態に置かれていた満州国成立当初は、中華民国の宗教管理法が適応されていたからだ。満洲国の宗教統制管理の実態を解明する上でも、このサブテーマの追究には大きな意味があるといえる。 このほか2017年度は国内外の三つの国際シンポジウムで講演、研究発表を行った。いずれの発表も本研究課題に何らかの形で関連しており、本研究の成果がここにも生かされている。
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