本研究の目的は、アルゼンチンカトリック教会の公共宗教性と救済宗教性の特色を明らかにすることである。具体的には①アルゼンチンカトリック教会が国家宗教から公共宗教へと変容した歴史的経緯を整理分析し、②カトリック教会内に存在する二つのグループ「組織教会」と「民の教会」における、公共宗教としての実践を調査する。さらに、近年カトリック教会が推進している③カリスマ刷新運動に焦点を当て、一般の公共宗教論に欠如しているカトリシズムの救済宗教的側面を明らかにすることである。 最終年度に実施した研究成果としては、博士学位論文に加筆・修正を加えて2017年12月に出版した『アルゼンチンカトリック教会の変容』(平成29年度科研費研究成果公開促進費)があげられる。本書では「組織教会」と「民の教会」に焦点を当て、第二バチカン公会議以降の神学的変化と司牧活動の具体的変化を考察することによって、カトリック教会の公共宗教性を明らかにした。また、日本社会学会大会(2017年11月)にて研究発表「カトリシズムにみる公共宗教性と救済宗教性―現代アルゼンチンの事例から」を行い、アルゼンチンカトリック教会の救済宗教的側面を検討した。 研究目的に照らすと、アルゼンチンカトリック教会の公共宗教性の特色を明らかにする目的は達成されたと考える。一方で、救済宗教性に関しては研究発表を行ったのみであり、現時点においては目的が十分に達成されたとは言えないが、現在、麻薬問題と依存症からの回復にみるカトリック教会の救済宗教性に関する論文を執筆中であり、近日中に発表する予定である。研究成果の発信に関しては、学術図書として一般に成果を公開したが、ホームページによる発信も近く予定している。
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