研究課題/領域番号 |
15K02068
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
対馬 路人 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60150603)
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研究分担者 |
川瀬 貴也 京都府立大学, 文学部, 准教授 (30347439)
永岡 崇 佛教大学, 研究推進部, 特別研究員 (30725297)
吉永 進一 舞鶴工業高等専門学校, 人文科学部門, 教授 (90271600)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大本教 / 出口なお / 出口王仁三郎 / 民衆宗教 / 東アジア / 皇道 / 超国家主義 / 神託 |
研究実績の概要 |
初年度は、まず大本教関連資料の収集作業と、戦後新宗教研究の学問史的検討に注力した。京都府亀岡市の大本本部には教学研鑽所が設置されており、教団史研究のため多くの資料が保管されているが、必ずしも十分な目録作成や分析は行われていない。そこで、本研究において、所属資料の全体像の把握に努めている。また、大本の地方分院や公共図書館、他宗教団体などが所蔵している資料についても調査を行い、20世紀前半に大本教が刊行した文書・画像・音声・映像資料、および大本教について書かれた新聞・雑誌記事や研究論文などの情報を収集している。 次に、研究代表者・分担者・協力者などで構成する共同研究会を4回開催し、そこで大本教の教団史『大本七十年史』を批判的に検討した。それを通じて、戦後の歴史学者の宗教観・歴史観を理解するとともに、史資料の調査結果の報告について議論を行った。具体的には、第一次・第二次大本事件に関わって、『七十年史』の歴史叙述の問題点と新たな課題の発見を行うとともに、神道天行居や天理教など、大本教と密接な関係を持つ諸教団との比較検討を行った。この研究会を起点として、ドイツやアメリカ、韓国など各国の新宗教研究者とのネットワークを形成することもできた。 また、中国の紅卍字会道院やベトナムのカオダイ教における神託儀礼と大本教の鎮魂帰神法の比較を通じて、近代東アジアで霊魂との交流の技法がどのように展開してきたかについて考察を行った。さらに、大本教における「皇道」概念の形成過程をたどるとともに、その歴史的特徴を検討した。これらの成果は、『人文學報』108号(京都大学人文科学研究所、2015年)に発表し、大本教研究の新たな局面を開くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の一つである、大本教に関する史資料の収集については、順調に進展しているといえる。しかしその史資料は文書、音声、画像、映像など多岐にわたる上、その量も膨大である。引き続き作業を進めるとともに、体系的な整理の方策について検討を行う必要がある。 また、『大本七十年史』の精読を進める中で、大本教における「皇道」概念の再検討や、第二次大本教事件の評価をめぐる議論の整理などを通して、従来の大本教研究がもつ問題点をある程度洗い出すことができた。 東アジアの近代史のなかに大本教を位置づけるという課題については、神託儀礼についての比較検討を行うことができたとはいえ、大本とそれらの交流の具体的な実態については十分に踏み込めているとは言えない。特に大本教が交流した相手側の教団の史資料の収集や検討が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
史資料の収集・分析については、引き続き初年度以来の研究課題を推進する。収集した史資料の整理・活用についても議論を深めてゆく。 次年度も、4回の共同研究会を開催して、情報や問題の共有を図る。主要な論点として大本のメディア活用を取り上げる。大本は日本の宗教団体の中で特に対外的メディア活動に力を入れた教団といえる。活用されたメディアも新聞や雑誌といった活字メディアにとどまらず、映像メディア、博覧会の開催など多岐にわたっている。特に昭和前期の社会状況において、大本がそれら多様なメディアを活用してどのような政治的・社会的・精神文化的活動を展開したか、その意図や実態や社会的意義について検討していく。この成果は、次年度の日本宗教学会学術大会においてパネル発表を行う予定である。 また、研究分担者・川瀬貴也が中心となり、植民地朝鮮、満州、中国本土および台湾における大本教の活動、宗教提携の実態について調査を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、今年度内で大本本部(亀岡および綾部)での、資料調査・収集、関係者への聞き取り調査、研究会を予定していたが、大本側との日程調整がつかず、延期となったため、その分の費用が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
大本本部での資料調査・収集、関係者への聞き取り調査、研究会について、大本本部と調整がつき、本年度6月に実施することとなった。次年度使用額をこれに充当する。
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