研究課題/領域番号 |
15K02068
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
対馬 路人 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60150603)
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研究分担者 |
川瀬 貴也 京都府立大学, 文学部, 准教授 (30347439)
永岡 崇 佛教大学, 研究推進部, 特別研究員 (30725297)
吉永 進一 舞鶴工業高等専門学校, 人文科学部門, 教授 (90271600)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大本教 / 出口王仁三郎 / 出口なお / 民衆宗教 / 東アジア / 皇道 / 宗教協力 / 世直し |
研究実績の概要 |
平成28年度は「大本七十年史」研究会を3回開催し、研究課題についての報告や研鑽を行った。平成28年6月4日~5日に京都府亀岡の大本天恩郷を訪れ、大本関係者と研究会を実施し、研究への協力について了解を得た。加えて大本資料館で資料の探索、コピーも行った。また京都大学人文科学研究所共同研究「日本宗教史の再構築」の研究会にも参加し、研究成果を報告した。また、日本宗教学会の第75回学術大会では、永岡崇を代表者として研究課題に関連するパネル「宗教の時代としての1930年代―メディア、博覧会、反宗教」を企画し、報告を行った。 データベースの作成については、大本資料室での文献検索、調査に加え、元大本教学研鑽所研究員の出口三平氏の所蔵資料の整理を進めた。さらに大本の昭和期の社会運動団体「昭和青年会」の機関誌『(昭和)青年』の復刻、出版(不二出版)に向けて作業を進めた。 海外の宗教とのネットワークづくりに関して、大本の系譜を引く三五(あなない)教が戦後に展開した「世界宗教会議」に関して、資料の収集を行った。また、對馬は9月に台北の世界紅卍会道院台湾総院を訪れ、大本との提携に関する聞き取り、および資料収集を行った。 對馬は大本教が昭和前期に展開した主要な宗教・社会運動のうち、「人類愛善」のスローガンを掲げ海外の宗教との協力・提携運動を展開した「人類愛善会」の活動、及び愛国的な挙国更生運動を展開した「昭和青年会」の運動について、資料収集および分析に努めた。川瀬は、植民地朝鮮における国家神道政策との関連で、大本を含む日本宗教の布教活動について資料収集、分析を進めた。永岡は1930年代の大本の博覧会活動を中心に、大本の「愛善主義」と「国家主義」の表象について分析を進めた。吉永は出口王仁三郎の『霊界物語』の宗教思想における西洋の心霊思想、特にスウェーデンンボルグの影響について解明を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料の収集および整理に関しては、出口三平氏や大本資料室の協力、昭和前期大本と密接な提携関係を持った中国の世界紅卍字会道院の台湾総院からの資料提供などにより、着実に進んでいる。ただし大本関連の史資料は質量とも膨大であり、どのような部分に焦点を合わせて収集し、どのような整理するのかについて検討中である。 海外の宗教とのネットワークの展開に関しては、中国大陸における大本(人類愛善会)の活動や現地宗教との関係については資料収集など成果がみられたが、従来解明が進んでいなかった朝鮮半島での大本の活動や現地宗教との関係についての調査研究が課題として残されている。 昭和前期、1930年代に大本が展開した多様で、精力的な宗教・社会運動(「人類愛善運動」、「昭和青年会」の運動、「昭和神聖会」の活動)について、特にその多彩で先進的なメディア活用の側面から光を当て、その対社会的なアピール活動の特徴について明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
大本教史に関するデータベース作成について、とりあえずは、特に出口なお、王仁三郎関係の史資料、その昭和前期の宗教・社会運動に関連した内外の史資料に重点を置いて、発掘、整理、データベース化を進める。 大本教の海外、特に朝鮮、中国、満州での布教、宗教協力・提携の活動の実態について解明を進めるとともに、協力・提携関係を持った海外、特にアジアの新宗教運動について、それらの宗教の思想、運動の特徴、大本との協力・提携の経緯や内容について探求、分析を進める。 昭和前期の大本の宗教・社会運動について、「神道天行居」など当時大本と類似した神道主義の「世直し」型宗教運動を展開した教団との比較の中で、その特徴の解明を進めるとともに、二代教主の出口直日や王仁三郎の後継者の日出麿に着目し、王仁三郎中心の大本像の相対化の作業に取り組む。また、大本、特に出口王仁三郎の宗教思想とスェーデンボルグ主義や神智学など西洋の近代心霊主義の思想の関係について解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
大本関係の史資料の目録作成、デジタル化を行う予定である史資料所有者の都合等を考慮し、これを最終年度に行うこととした。その作業に必要な経費を残したため、未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
大本関係の史資料の目録作成、デジタル化のための経費として使用する。
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