研究課題/領域番号 |
15K02070
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 達也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40383385)
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研究分担者 |
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 名誉教授 (70152840)
柳橋 博之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70220192)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アラウィー派 / ドゥルーズ派 / イスマーイール派 / シーア派 / 十二イマーム派 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、前年度に引き続きアラウィー派の比較対象となる11世紀のドゥルーズ派の思想研究を進めつつも、これまでの研究の総決算として、アラウィー派、ドゥルーズ派といった宗教的少数派をも視野に入れた、古典期(~13世紀)におけるイスラム思想の全体像と多数派と少数派の相互関係の把握にも注力した。 2019年刊行予定の本であるため平成29年度の研究成果の中に入れることができなかったが、すでに提出済みの原稿(『グローバル・イスラーム文明論』収録予定)においては、イスラム教における異教徒への布教という問題を扱いつつ、ドゥルーズ派によるユダヤ教徒布教をその事例として分析した。ドゥルーズ派によるユダヤ教徒への布教がきわめて例外的なものであり、その手法はイスラム教の主流派には受け入れがたいものであることを示すことにより、本論は、イスラム思想全般において異教徒宣教への積極性が欠けていることを明らかにした。また、前年度に着手した『英知の書簡集』翻訳計画については、年度内に間に合わせることはできなかったが、平成30年度中にはその第二段が刊行の予定である。 本年度出版した編著『イスラム教の歴史』は、『アラウィー派の遺産シリーズ』の分析によって得られた研究成果を生かし、宗教的少数派をも視野に入れたイスラム思想の全体像を示した。本書における成果の一部は、一般向けの講演「宗教にとっての正しさと不寛容:ISの台頭が問いかけること」にも反映されている。この編著と講演は、本研究プロジェクトの総括的な成果であると共に研究成果の社会への還元でもあった。 なお、研究分担者である鎌田と柳橋も本年度中、それぞれイスラム宗教思想研究とイスラム法学・伝承研究の観点から本研究に寄与する研究成果を複数発表した。これによりイスラム少数派の思想を広く古典イスラム思想の全体像の中に位置づける視座が得られたと考えられる。
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