研究課題/領域番号 |
15K02073
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐藤 真基子 富山大学, 共通教育センター, 教授 (30572078)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教父思想 / アウグスティヌス / キリスト教神学 / 古代末期 |
研究実績の概要 |
本年度ははじめに、アウグスティヌス『告白』最終巻(第13巻)における詩編解釈を手がかりに、言葉の役割についてのアウグスティヌスの考察がパウロ解釈およびその人間観とどのように関係づけて考えられているかについて分析し、この研究成果は、5月にデンマーク・オーフス大学で開催された研究セミナーで発表した。この研究発表を機に得られた各国の専門家らとの意見交換を参考にしながら同じテキストについてさらに研究を進め、旧約聖書における「闇」や「淵」の概念がアウグスティヌスにおいてその人間理解の形成に密接に関係していること、そしてその人間観に基づいて、アウグスティヌスが「告白」という言語行為に固有の意味を見出していることを明らかにした。この研究成果は、8月にイギリス・オックスフォード大学で開催されたXVII. International Conference on Patristic Studiesで発表した。発表後はDr. Gabor Kendeffyをはじめとする初期キリスト教の専門家らの助言と情報提供を受けながら論文にまとめ、学会誌(Patristic Studies)に投稿した(審査中)。 9月以降は、当初の計画通り、アウグスティヌス『三位一体論』における言語理論の研究に着手した。そしてその第15巻における言語論に、彼の初期著作における言語論とは区別される議論の特徴があることを示した。そしてその議論が彼のキリスト理解と関係していることを指摘した。この成果は、慶應義塾大学言語文化研究所紀要(第47号)に投稿、掲載された。さらにこの研究を通して課題として見出された、『キリスト教の教え』第4巻における「生き方(forma vivendi)」の概念について分析を進め、3月にオーストラリア・ブリズベンで開かれたオーストラリアカトリック大学初期キリスト教研究センターの研究集会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に記載通りのペースで研究を進めることができている。国際学会への参加を通して、計画当初予想していなかった以上に国内外の研究者らとの意見交換、情報収集、研究の新たな方向性の発見、成果発表の機会を得ることができ、本研究の遂行に大いに役立てることができている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は計画通り研究を進めることができたので、本年度(28年度)も当初の計画にそくして研究を進めていく。 本研究は、研究成果の学会発表および学術論文の発表のみならず、翻訳の作成もその課題としている。前年度取り組んだ翻訳作業を通して、翻訳を作成するために必要な時間の使い方、取り組み方を学んだ。本年度はその経験をいかしながら、翻訳の作成と研究発表を両立させて本研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ当初の計画通りに使用した。一千円未満の次年度使用額が生じたのは、文具が格安で購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
図書、文具の購入費用に充てる。
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