研究課題/領域番号 |
15K02074
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
小関 武史 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (70313450)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 『百科全書』 / 中国 / 18世紀 |
研究実績の概要 |
本研究は、以下に示す五つの段階を踏んで、18世紀フランスにおける中国表象のあり方を解明することを目指している。すなわち、(1)『百科全書』の中国関係項目の分類・整理、(2)その典拠文献の解明、(3)主要執筆者の中国観の分析、(4)『百科全書』全体の中国観の分析、(5)『百科全書』の周辺に位置づけられる文献における中国表象の分析、である。 平成28年度においては、段階(2)と段階(3)をおおむね完了させた。典拠の解明については、クロード=フランソワ・ランベールの『奇習集成』、文芸アカデミーおよび科学アカデミーの論集、ジェイムズ『医学辞典』などの調査で進展を見た。とはいえ、典拠研究において完全を期すことは難しい。安易な断定は慎み、個別の事例について判断材料を提供することに主眼を置いた。主要執筆者の中国観の分析については、予定通り、ディドロ、ジョクール、ドルバックに対象を絞った。 研究成果の公表に向けた準備も進めている。段階(1)と段階(2)の蓄積を、先行的にフランス語の論文にまとめ始めている。それはすでに300ページほどの分量に達しているが、研究成果は一括して公表する方が適切であると考えている。 平成29年3月にパリに出張した際には、現在の『百科全書』研究の第一人者であるマリー・レカ=ツィオミス教授と意見交換し、有益な助言を受けた。とくに、「典拠」の概念と「文献指示」の概念の峻別が重要であることを指摘され、本研究の方法を精緻化する手掛かりを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には、段階(2)の典拠文献の解明をほぼ完了させた。そもそも典拠など存在しようのないケースや記述が漠然としすぎているケースを除き、8割程度の項目で典拠文献を絞り込むに至った。また、段階(3)の主要執筆者の中国観の分析についても、ディドロ、ジョクール、ドルバックが三者三様の態度を示していることを確認できた。また、フランス語論文の取りまとめにも着手できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる平成29年度には、段階(4)の『百科全書』全体の中国観の分析および段階(5)の『百科全書』の周辺に位置づけられる文献における中国表象の分析を遂行する。段階(4)としては、項目を内容に基づくカテゴリー単位で整理するとともに、ディドロ、ジョクール、ドルバック以外の副次的執筆者をも加えた執筆者ごとの整理も行う。これに、典拠文献から逆照射する形で『百科全書』の中国関係項目を分析する。段階(5)としては、『トレヴー辞典』やモレリの『歴史大辞典』の中国関係項目を調査する。それらの研究成果を総合して、フランス語で論文を公表する。
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