ナチス・ドイツのホロコーストにより精神分析の世界地図が塗り替えられた第二次大戦以後、精神分析の社会的・制度的発展の裏面をなすかのように繰りかえされた精神分析家組織の度重なる分裂・離散の過程を辿った。分析家たち自身によって「ディアスポラ」にも準えられ、今日の精神分析の世界的衰退の遠因にもなったこの分裂・離散の様相は、しかし、第二次大戦以前に非ユダヤ人のリーダーを見いだしていたフランスと、同じ時期にもっぱらユダヤ人によって先導され、大戦中も迫害を逃れてヨーロッパから移住してきた多数のユダヤ人分析家を受け入れた米国とでは、事情が異なる。その理由を、文献と調査にもとづいて考察した。
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