研究実績の概要 |
本年度は、9月13日から15日本務校岡山大学大学院ヘルシステム統合科学研究科で開催した「初期キリスト教における健康・幸福・老いhealth, well-being and old age in Early Christianity」をメインテーマとする「Asia Pacific Early Christian Studies Societyアジア環太平洋初期キリスト教学会国際研究集会」APECSS2018において、Health Systems in Augustineというテーマで研究発表し、古代末期における富と貧困の問題がアウグスティヌスにおいては、老いや病という人間の条件human conditionに深く関わるシステムの問題であることを明らかにした。 この視点は、2017年3月の「アウグスティヌスにおける「貧困」「病」そして「老齢」(パトリスティカ第20号所収)論文を補完するものであり、その準備の過程で、メルボルンでの古代末期におけるイノベーションというシンポ(2018年8月16日17日)に出張参加して,ベルギーやオーストラリアの研究者と情報を交換し、最新の研究動向をフォローすることができた。 また、貧困が老いをいかに生きるかの条件として深く関わる点については、すでに、2015年8月OxfordでのInternational Conference on Patristic Studiesで発表した、Poverty and Senescence in Seneca and Augustineを補完する形で、2019年3月刊行の「老いの境界ー西洋の知見から」という論文(『老い 人文学・ケアの現場・老年学』ポラーノ出版 所収)で、さらに視野を広げ、古典古代(プラトン、キケロから近代(夏目漱石『道草』やT・S・エリオット)なども考察した。以上を通じて、古代末期における富と貧困をめぐる人の善きあり方としての「徳」に関するアウグスティヌスらの理論は老いや病という人間の条件に関する理論に通底することが明らかになった。
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