本研究は、(1)原典の精読に基づき、最新のヘレニズム哲学倫理学研究と、古代末期史学の成果を踏まえ、両領域を架橋し思想史的な視野のもとに統合的に考察する点で新しい学術的意義を有する。(2)特に、彼らのレトリカルな言説の根底に確立した富と貧困に関わる「徳」の理論的成立と古代末期における変容を精査することで、現代の徳倫理学virtue ethicsでは見失われがちな富と貧困という人間が直面する現実の問題へのアクチュアルな関与を見据えるという現代的意義を有する。(3)さらに、東方と西方の偏差を見据えることによって、古代末期思想史を捉え直すことでその研究成果の国際的な寄与を果たした。
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