研究課題/領域番号 |
15K02083
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
松本 郁代 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 准教授 (60449535)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 天皇 / 場所性 / 仏教的世界観 / 須弥山世界 / 時空間認識 |
研究実績の概要 |
中世日本の仏教的世界観における天皇の「場所性」に関する概念の検討を行った。場所性とは、空間が場所の特性によって意味づけられることである。これは、場所自体の意味のみならず、限定的であってもある空間における場所の意味を通じて、そこに一つの文化体系の様態を認めることが可能となる。 本研究では、中世日本の時空間を、神話や仏教的世界によって形成された観念的・思想的な歴史的時空間として捉え、それを場所性の問題に据えた。さらに、中世に特徴的な秘説や秘伝を装いながら文化の流派が独占的に形成されていく背景に、「天皇」がこのような時空間に存在し、またその時空間が「天皇」の存在を存在たらしめた、その限定的空間のあり方と、その場所性について考察を進めた。 本年度は、中世の天皇をめぐる空間と場所との関係を把握するための分析を行った。主に天皇が所在する時空間に強い思想的影響を与えた理念として、第1に中国皇帝を中心とする華夷秩序、第2に須弥山を中心とする仏教的世界観、第3に「穢れ」の秩序によって相対化される内裏空間と辺境意識について論じた。特に、空間認識が表象化された古地図や理念図、文献資史料を通じ、空間における場所の分析および「天皇」の位置に関する考察を行った。 これらは、前近代における時空認識や世界観とも交差する問題でもあるが、たんなる時空間把握にとどまらず、平安京など、ある文化圏を形成する空間では特徴的な場所性を有すことになる。その特徴的な場所性をもつがために、秘密主義や権威主義を志向するような思想の力学的な問題が発生し、その場所における文化形成にも影響を与えたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に関する研究発表をつうじて、今年度計画していた研究内容に関するある程度の結論を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
海外における共同研究の連携を模索しながら、引き続き中世日本の文化体系に位置づけられる秘説とその様態、天皇を中心とする場所性の形成と、そこから生まれる文化的問題について追究していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍購入に関して、年度末に海外での発表が入ったため支出が間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍の購入にあてる。
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備考 |
大学広報課が作成した教員から学部生や受験生に向けたメッセージのうち、「偽文書や仮託書から、歴史の地平を知る」記載の「記された事実よりも、どのような事実としてあるのか?」「日本の文化形成に根ざす秘密主義」の部分が研究に関わる。
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