研究実績の概要 |
本研究は江戸初期から明治末にかけての浄土系仏教とキリスト教との相互理解・交流史や社会情勢を背景に近代日本の霊魂・救済・後生・倫理のそれぞれの観念や言説形成を検討してきた。研究によってはっきりしてきたのは、日本人仏教者がキリスト教ならではの一神教の教理などを仏教的な枠で解釈しながら論破・論駁に当ってきた。研究期間の業績はこれらのテーマを反映し、細かい論述で発展させていくものである。The Myotei Dialogues: A Japanese Christian Critique of Native Traditions. (NUS series Brill, Leiden. Co-edited with Richard Bowring, 2015)は、江戸初期の仏教・キリスト教の交流史の全体像を提示する中で、主な言説である後生観・救済観・善悪問題・倫理問題を考察しているのである。他の業績である、“The Pure Land Is No Heaven: Habian's Myotei Dialogues, Valignano's Japanese Catechism, and Discourse on the Afterlife during Japan's Christian Century” (History of Religions vol. 57, no. 3 (February 2018), pp. 229-269) などはそれぞれの言説を取り上げ、より細かく検討する。
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