研究課題/領域番号 |
15K02089
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
安藤 真次郎 龍谷大学, 文学部, 教授 (70309110)
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研究分担者 |
野村 竜仁 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (70405364)
岡本 信照 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (90309518)
立岩 礼子 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (80321058)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スペイン・ルネサンス / 人文主義 / スペイン思想 / 教育思想 / サラマンカ大学 / アルカラ大学 / バレンシア大学 / サント・ドミンゴ大学 |
研究実績の概要 |
3年間の研究期間の2年目にあたる今年度は、(1)国内外での関係資料および文献の蒐集、(2)研究会の開催、(3)研究成果の一部の発表、が主たる活動であった。 (1)海外での関係資料および文献の蒐集は、安藤がスペイン、岡本がメキシコ、立岩がメキシコおよび台湾でおこなった。国内での関係資料および文献の蒐集については、各人が大学図書館、専門書店などを通しておこなった。 (2)研究会については、4月(大阪)、9月(大阪)、3月(大阪)の3回おこなった。4月の研究会では、2016年度の活動方針および研究計画について具体的な話し合いをおこなった。9月の研究会では、国内学会でのパネル発表についての各人の発表内容について確認し、意見交換をおこなった。3月の研究会では、最終年度にあたる2017年度の研究計画について具体的な打ち合わせをおこなった。 (3)研究成果の一部の発表については、安藤、野村、立岩、岡本の4名で日本イスパニヤ学会第62回大会(於:神戸市外国語大学)で「16世紀スペインにおける大学教育の理念と実践」というテーマのパネル発表をおこなった。また立岩は国立台北教育大学からの招待で、「エルナン・コルテスのルネサンス的思想」と題する講演をおこなった。 なお、研究費の主な使用用途は、安藤が資料文献の購入とスペインへの渡航費、野村が資料文献の購入、岡本が資料文献の購入とメキシコへの渡航費、立岩がメキシコおよび台湾への渡航費であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各分野において、下記の通り研究を進めることができたため。 【人主義教育】スペインの大学でルネサンス人文主義教育がどこまで進んでいたかを、レトリック教育という視点から考察した。具体的には、16世紀スペインにおけるレトリック理論の潮流を明らかにするとともに、サラマンカ大学、アルカラ大学、バレンシア大学でどのようなレトリック教育が行われていたかを明らかにした。 【宗教教育】枢機卿シスネロス主導のもとで創立されたアルカラ大学が、どのような理念を標榜し、その実現に向けていかなる教育課程を整備していったのか、当時の宗教思想との関係を中心に検証した。その中でスペインにおけるユダヤ教の釈義の伝統と、イタリアを中心とした新プラトン主義の重要性を確認することができた。 【新大陸における教育】日本イスパニヤ学会第62回大会において、サント・ドミンゴ大学創設の意図と経緯について口頭発表を行った。その結果、新大陸における具体的な授業や学生の実態について調査する必要が生じ、サラマンカ大学及びドミニコ会サンエステバン修道院、セビーリャのインディアス総文書館において、新大陸における大学設立に関する資料の収集を行った。また、台湾の国立台北教育大学においてエルナン・コルテスのルネサンス的思想について講演を行い、フランシスコ会やメキシコ大学創設について言及した。さらに、スペイン及びオランダの支配を強く受けた台南においてルネサンスの影響を受けた痕跡を国立歴史博物館の訪問を通じて調査した。 【言語教育】メキシコ国立自治大学に赴き、16世紀のメキシコで主にフランシスコ会士が編纂したナワトル語やタラスカ語の文法・語彙集を中心に最初期の伝道語学に関する資料収集を行った。ラテン文法の枠組みを用いた生きた言語の文法記述というネブリハに始まるルネサンス的方法が、16世紀の新大陸でいかに応用されたかを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる次年度は、これまでの研究成果をまとめ、『16世紀スペインにおける人文主義教育思想の展開と実践』という表題のもとに研究成果報告書を作成することが主たる研究活動である。具体的な各分野の研究成果のテーマは以下の通りである。 【人文主義教育】16世紀スペインの人文主義教育の特徴を、ルイス・ビーベスやフェルナン・ペレス・デ・オリーバなどの作品に見られる人間観・道徳観の考察を通して明らかにするとともに、サラマンカ大学、アルカラ大学、バレンシア大学におけるレトリック教育の考察からも明らかにすることを試みる。 【宗教教育】ルネサンス期スペインの大学教育における、アルカラ大学に象徴される新たな宗教教育とその後の変容に関して、俗語による釈義の試みとサラマンカ学派を中心とした神学の潮流との関係を中心として、考察を加える。 【新大陸における教育】2016年度に収集した資料をもとに、新大陸における大学創設に関連して、具体的な授業、教授陣、学生の実態についてまとめ、サラマンカ大学やアルカラ大学がどういう点においてモデルとされたのかを明らかにする予定である。 【言語教育】メキシコと並んで早くから伝道語学の拠点となり、すでに大学内に先住民語(ケチュア語)の講座が設けられていたペルーに焦点を当て、16世紀後半以降の南米大陸において、とりわけイエズス会士らが実施した先住民諸語の文法記述のプロセスと意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外研究協力者の招聘が実現できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に企画している研究会に海外研究協力者を招聘する際に使用する。
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