研究課題/領域番号 |
15K02092
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
佐藤 トゥイウェン 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80734079)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベトナムの「家訓」文献 / ベトナムの「女訓」文献 / ベトナムの伝統倫理、家庭教育 / ベトナムの儒教、思想史、孝思想、 / 字喃、ベトナム語 |
研究実績の概要 |
本年度は科研費(基盤C)の研究費の助成を受けてベトナム・ハノイの漢喃研究院、ベトナム国家図書館、ベトナム社会科学情報院、フエの文廟、ホーチミン市総合科学図書館およびフランス極東学院、フランス国立図書館、ギメ東洋美術館図書館、フランス・パリの大学間共同利用言語・文化図書館に資料調査に赴き、ベトナムの「家訓」関連文献(漢文・字喃文・国語字文(現代ベトナム語正書法))および儒教に関する資料を収集・複写した。研究活動の成果は東アジア文化交渉学会第7回国際学術大会(2015年5月)や関西大学ICISシンポジウム「文化交渉学のパースペクティブ」(2015年7月)において報告した。論文は『東西学術研究所紀要』第48輯(2015年4月)、『全球化視野下的中国儒学研究』(中国・孔学堂書局、2015年9月)に掲載するほか、『東アジア文化交渉研究』第9号(2016年3月)に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベトナムに所蔵されている「家訓」文献については、先行研究によれば約50点であるとされており、一定していない。ここからも、ベトナムにおける「家訓」関連の文献についての調査が、なお不十分であることがわかるが、さらに興味深いのは、これら先行研究において「家訓」文献として計上されているものの中には、「家訓」の文字どおり、自らの子孫に対する家庭教育の資料として著述されたもの以外に、呂祖などの神仙が一般の人々に対する教訓書として著した資料や「降筆経」、「善書」なども含まれていることである。これらの「家訓」文献のいくつかは現代ベトナム語に訳されており、何度も版を重ねているものも多く見られる。 これらの「家訓」関連文献について、子孫に対する家庭教育の資料として著述されたもの、およびベトナムが受容した中国の「家訓」関連文献を対象として、所蔵状況の調査を行なった。その結果、現在、ハノイの漢喃研究院、ベトナム国家図書館、ホーチミン市総合科学図書館、ベトナム社会科学情報院(以上ベトナム)、フランス極東学院、フランス国立図書館、大学間共同利用言語・文化図書館、ギメ東洋美術館図書館、パリ・アジア協会(以上フランス)および日本・東洋文庫、東京大学図書館、東京外国語大学図書館、京都大学図書館、大阪大学図書館などに、約107点もの文献が所蔵されていることが明らかになった。 そのため、申請者は27年度、ベトナム、フランス、日本において約70%の資料を複写し、あわせて「家訓」文献を考察、分析している。計画調書に沿って順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度(4月~29年3月)の研究の計画は以下のとおりである。 まず、「家訓」関連文献のうち、王室の子孫に対する教訓書としての「家訓」1点につき、文献の成立年代、作者の経歴、文献の内容を分析し、「孝」、「義」および伝統的家庭教育・倫理の特色について考察し、論文を発表する。 次に、ベトナムの儒者・知識人が著した「家訓」約80点の文献の分析を行う。すなわち、これらの「家訓」文献のうち、重要で代表的文献につき、文献の成立年代、作者の経歴、文献の内容を分析し、「孝」、「義」、および伝統的家庭教育・倫理の特色について考察し、論文を発表する。 また、字喃で翻案もしくは解説された代表的「家訓」文献の訳注作成に着手する。
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