平成27年度は科学研究費助成金基盤研究(C)「東アジアにおける天道信仰の総合的研究―道教・陰陽道とのシンクレティズムを中心に」の研究代表者として、基本となる文献の収集および調査と、国内外のフィールド調査を行った。 特に本年度の国内調査としては、北関東・千葉県における、天道信仰と道教・陰陽道に関する史料調査およびフィールドワークを、国外調査としては、韓国における民間信仰と道教・陰陽道に関する史料収集調査を行った。 国内調査においては、天道念仏の信仰が残る、千葉・茨城・栃木・群馬のフィールド調査と資料収集および当該地域における天道ないし天の名を冠する神社の調査を行い、いずれの地域にも修験者の介在がみられるという調査結果を得たのは大きな収穫であった。他方資料調査において、修験道関連の儀礼・文献資料の中に、道教・陰陽道の影響が明らかに見て取れる部分を見出した。当該の調査結果については来年度以降、学会発表等の形で発表していく予定である。 国外調査においては、韓国の民間信仰に見られる「天」ないし「天道」に関する儀礼等が見出されるかどうかが焦点となったが当該資料に当該の概念を見出したのは収穫である。今後、日本の天道信仰と、韓国の当該概念の比較検討を慎重に行っていく予定である。 他方、本年度は、近世日本の仏教者、鈴木正三および近代日本の仏教者、清沢満之の天道信仰についての検討を踏まえて鈴木正三のテキスト翻訳の成果を『鈴木正三著作集』上・下巻および『清沢満之』(中央公論新社)の解題の形で発表した。
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