研究成果は以下の2つである。①音楽と文学における虚構性の共通構造と差異、②文化的コンテクストにおける虚構性受容構造分析。 音楽は作為的時間の作出/表出を基盤に置き、言語芸術におけるプロットと類似した構造を有している。この構造的類似性から、音楽作品を《虚構》とする共通的構造側面に到達した。対して音楽と文学の受容過程で《語り手》と《代理話者》で構造的差異が観測できた。続いてフィクションとしての芸術の受容には、その作品が成立する文化的コンテクストが大きく作用する点を、明治期の小説におけるヴァーグナーの架空の受容、戦後の前衛音楽の衰退とポストモダン終焉にともなう現象を実例をもとに分析した。
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