研究課題/領域番号 |
15K02107
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
小石 かつら 関西学院大学, 文学部, 准教授 (00636780)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メンデルスゾーン / 交響曲 / オーケストラ / ライプツィヒ / ベルリン / 演奏会 / ロンドン |
研究実績の概要 |
本研究は、音楽が鳴り響く「場」としての「演奏会」に注目することで、多面的な音楽ジャンルの相互連関を明らかにし、その結果を、ヨーロッパ諸都市におけ る状況と比較することで、音楽文化のグローバル化の実態を解明することを目的としている。そのために、ヨーロッパで最も歴史の長い民間オーケストラである ドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の創立(1781年)以来のプログラムの変遷をたどることを研究の主軸としている。 昨年度から、ベルリン宮廷劇場を調査対象に加え、ウィーン楽友協会を外した。というのも、調査をはじめたところ、ウィーンでの演奏会は主催機関が多い一方で、特定の主催者による演奏会が少ないため、比較対象として数的な不足が顕著であることがわかったためである。さらに、メンデルスゾーンを中心にしていることから、彼の活動拠点であるライプツィヒとベルリンを対象とした方が効果が高いという理由もある。 これをふまえ本年度は、1840年にライプツィヒで開催された活版印刷400年記念祝典において、メンデルスゾーンに委嘱された交響曲第2番《賛歌》に関する上演状況を精査した。この結果について、政治的式典とそれにふさわしいとされる音楽の内容といった側面からまとめ、9月にアムステルダムで開催された国際学会で発表した。 また、本研究のメインテーマの背景である「オーケストラの演奏会でオペラからの抜粋上演が大人気だった」ということの実態を具体的に明らかにするため、演奏会用序曲《美しきメルジーネの物語》を例に、作品内容について精査した。オペラからの抜粋で最も好まれたのは「序曲」だが、これには印刷楽譜の大量出版と楽器の普及が関連する。家庭でたのしむ音楽として「再利用」されるオペラ作品において重要なのは「物語性」ではないかと考え、2019年7月に国際美学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定であったウィーンの調査を変更した他、パリ、ミュンヘンへの出張をおこなっていないが、これは、インターネット上で資料が公開されるようになったためである。出張計画の一部を変更したが、ヨーロッパ諸都市の比較研究という主軸に変更は無く、また、パリ、ロンドンについてはインターネット上で公開されたデータベースを使用して調査が進んでおり、研究全体はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度も引き続き、メンデルスゾーンの活動を軸に研究をすすめる予定である。また、7月にセルビアで国際美学会が開催され、発表を予定していることから、ベオグラード、およびソフィアの劇場についても調査をしようと考えている。この地方の作曲家の足跡は明らかになっていないことが多く、新たな発見があると期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度にウィーンで予定していた調査を取りやめ、また、インターネット上で資料入手が可能になったため、未使用額が生じた。未使用額は、インターネット上で入手できない地方の劇場資料を入手するための、セルビア、ブルガリア調査にかかる費用に充当する。なお、それに伴う研究計画の変更は無い。 所属機関変更にともない、データ入力の作業のためのアルバイトが見つからず、謝金を使用しなかったが、2019年度はアルバイトが見つかり、データ入力作業を既に依頼している。
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