これまで、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の1781年からのプログラム(上演記録資料)を整理し、データ化するという作業を遂行してきたのだが、最終年度の今回は、データファイルを刷新し、再度、全てのプログラムとデータをひとつずつ照合し直し、入力ミスや表記ゆれを点検した。また、ロンドン・フィルハーモニー協会のプログラム(1813-1912)についても、同様の作業を実施した。これにより、今後、これらのデータを活用した研究へとつなげることができるようになった。
データが活用できるようになったことで、メッセ(見本市)の開催と演奏会との関連について、調査を始めることができるようになった。具体的に調査したのは、新年の見本市に合わせて開催された1月1日の演奏会についてである。その結果、新年の演奏会における演奏曲目は、ほぼ固定されていることがわかり、演奏会で取り上げられる作曲家に大きな片寄りがあることがわかった。この詳細については、現在精査中である。
その他、プログラムに記載された事柄と記載されなかった事柄の変遷について調査した。その結果、現代とは異なる演奏会の聴き方の実態が明らかとなった。つまり、記載事項により、聴者にとって重要な事柄(関心のある事柄)と重要でない事柄の差異がわかるのだが、現在のように作曲者に注目することがなかった時代において、聴者が注目していたのが、演奏者なのか作品なのかについて、解明することができた。
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