研究課題/領域番号 |
15K02109
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
三木 順子 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (00283705)
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研究分担者 |
柿木 伸之 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (60347614)
原 千史 福山大学, 人間文化学部, 教授 (70248293)
高安 啓介 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (70346659)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 形象 / イメージ / 人間学的美学 / 倫理学的美学 / 批判美学 / 発生学 |
研究実績の概要 |
最終年度は、これまでも研究の主軸としてきた、1)国内外のイメージ論の動向の調査、2)前年度の研究成果を収めた雑誌の刊行、3)各メンバーによる個別の考察を共有・総合を、以下のとおり継続し展開させた。 1)調査:代表者の三木がドイツ・スイスで、分担者の柿木がフランスで、イメージに潜勢する「力」が、芸術の展示や上演、さらにはデザインや都市計画において、どのように実現し機能しているのかを調査した。 2)雑誌の刊行:初年度に創刊した雑誌『形象』の第3号を2月に刊行した。本号では、初めて特集ページが組まれることとなった。特集〈フランスのイメージ論―現象学の流れのなかで〉では、メルロ=ポンティ、レヴィナス、デュフレンヌに焦点を絞り、それぞれの思想に詳しいゲスト執筆者を迎え、「イマージュ」というフランス語の概念が孕む多義性が論じられている。 3)研究会:3ヶ年の研究を総括する特別公開研究会「イメージの人間学/人類学」を、ゲスト・スピーカーを招聘して開催した。全体討論では、「描く人(ホモ・ピクトル)」としての人間の在り方が、フロイトの精神分析とハンス・ベルティングの著作『イメージ人類学』を導きの糸としながら、個体発生学的な視点から検証された。 本研究は、イメージを「描く人(ホモ・ピクトル)」としての人間の在り方を問う、イメージ論としての人間学的美学を新たに構想しようとするものであった。3ヶ年に渡る調査と考察は、この新しい人間学的美学が、いかにして旧来の人間学のような人間中心主義に陥ることなく展開しうるのかという問いへと収斂していった。イメージは、物質に基づきながらもたんなる物質であることを踏み越えていく。イメージというもの自身を主体する、イメージの「発生学」もまた重要となろう。イメージの発生学と共鳴する人間学的美学の必要性と有効性を示唆することができた点に、本研究の独自の意義が求められよう。
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