研究課題
2017年にアテネとカッセルにて開催されたドクメンタでは、ポーランド出身の芸術監督、アダム・シムチック氏監修のもと、多くの旧東欧出身の作家たちの活動が取り上げられ、近現代美術史の見直しも試みられた。多数のアーカイヴ資料も活用しながら、映像記録も含めて貴重な展示が実現しており、現地に赴いてそうした作品や資料を詳細に調査すると同時に、研究者や学芸員とも意見を交換し、タデウシュ・カントルや同時代の実験的演劇活動、ハプニングやパフォーマンスの及ぼした影響関係について知見を深めることができた。ワルシャワにてプロフィール財団のボジェナ・チュバック氏と面談し、60年代から70年代にかけてのポーランドにおける概念芸術の状況と、その影響について資料に基づきながら議論し、クラクフではクリコテカ館長のナタリア氏と面談、開催中のカントルを含めた実験的芸術集団の活動について調査した。またヴェネチア・ビエンナーレやミュンスター彫刻プロジェクトなど同時に開催されていた大型国際美術展の作品も調査を行い、それぞれの傾向の違いを確認すると同時に、各国の学芸員、研究者と意見交換を行う機会を得た。ポーランドから若手作家のカロリナ・ブレグワ氏を招き、龍野アートプロジェクト2017「龍野アートスケッチ」にて《塔》というミュージカルオペラ作品を上映すると同時に、地元住民や地元の演劇集団「わくわくプロジェクト」と共に映画撮影のワークショップを開催し、ストーリー作りから演出まで話し合いながら進め、会期中に成果発表・鑑賞会を行った。この場にはポーランドより来日の日本美術技術博物館マンガ館長副館長も同席し、活発な意見交換が実現した。このように国内外において美術作品と身体性、演劇との関係を考察しつつ、カントルの及ぼした影響と、それ以後の発展についての調査考察を継続している。
2: おおむね順調に進展している
おおむね当初の計画通りに進行中である。
前年度に引き続き、ポーランドにおける実験的演劇表現のルーツとその発展についての研究を進める。その際、カントルおよび同時代の芸術家たちが社会において果たした役割や政治との関わりについて注目する。冷戦期から雪どけを経て、体制転換後に大きく変化したポーランド社会と、それにつれて変化しながら現代に至る芸術、特に身体表現のあり方に関しても研究を進める。2018年はポーランド独立100周年、2019年は日本ポーランド国交樹立100周年と記念の年が続くが、カントルの美術と演劇にまたがる芸術活動の在り方は極めてポーランド的ともいえることから、こうした記念年が続くことは研究の進展にとって非常に有意義である。更に申請者が芸術監督として兵庫県たつの市にて継続中の「龍野アートプロジェクト」でも、関連企画を実施して演劇と美術の今日的関係について、上演芸術の実施を通じて明らかにしてみたい。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Proceedings of ICA 2016 “Aesthetics and Mass Culture”
巻: 20 ページ: pp. 494-501
The 2nd Asian Conference of Design History and Theory, Design Education beyond Boundaries
巻: 2 ページ: pp.89-95.
2189-7166