本研究のまとめ。「タデウシュ・カントルにおける身体と記憶-美術と演劇の相関関係」について包括的研究を実施し、美術と演劇とがどのように関わっているのかといった点にも注目しつつ、美術とパフォーマンスとの関係についても考察を行った。2019年は日本ポーランド国交樹立100周年にあたり、ポーランド及び日本にて関連の研究会、シンポジウム、展覧会など催しが多く企画されたが、「セレブレーション:日本ポーランド現代美術展」を京都、ポズナン、シチェチンにて企画実施すると共に、ワルシャワで開催された「直筆」シンポジウムや、クラクフにて開催された国際会議に出席して報告を行った。20 世紀広範の社会主義諸国において、パフォーマンスによる直接的身体表現は極めて重要な意味を持つものであった。冷戦の終結と、新たなテロとの戦いが現れた今世紀において、かつて直接的表現の持ち得た力がどのように変容しているのかを示し、また日本とポーランドの若手中堅作家たちの新たな傾向について考察を行うと共に、今後の芸術の可能性について論じた。前年に続いて龍野アートプロジェクトにおいても、上演芸術に焦点を当てつつ「龍野アートプロジェクト2019「アニマ」」を実現し、美術と演劇との今日的関係について考察した。2019年の前期は所属機関より研究休暇を得、またアダム・ミツキェヴィチ・インスティテュートとクラクフ国際文化センターの援助により、クラクフを拠点にしつつ調査研究を実施することができた。本研究の成果に基づき、『カントルから-ポーランド前衛美術の継承と発展』(仮)を2020年度中に発行の予定で準備を進めている。
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