研究課題
昨年度までの研究に続いて、プロティノスにおける感覚(アイステーシス)にかかわる議論の読解と解釈を続行し、イメージを知覚する感覚的な受容の働きがいかに知性的な把握の働きに連動しているかという問題に関係すると思われるテキストの検討をもとに考察を遂行した。引き続き、第1論文「美について」、第53論文「生命あるものとは何か、人間とは何か」の分析・考察をより細かく進めるとともに、第27-29論文「魂の諸問題について」、第19論文「徳について」および第31論文「直知される美について」にも考察対象を広げた。その過程で、プロティノスの展開している議論をよりよく理解するためには、彼が大きく依拠しているプラトンの思想の把握も再度必要であることが強く意識されることになり、感覚対象と知性対象の関係についてのプラトン解釈の中でプロティノスにおいて発展的に取り込まれていくかという点に注意を払った。また、それまでの成果の一部を、台湾で開催された学会で研究発表を行い、プロティノス美学における感覚の位置づけについて、「類似性」や、形自体の持つ主体的活動性を魂の働きに関係づけて知性的な働きにつながる機能を探る試みを行なった。その中で、このプロティノスの感覚的な表象機能と知性的な把握との関連性について考察が、芸術活動を理解するための一つの重要な基礎的な視座を提示しうることを主張した。これまでの、プロティノス美学における感覚の働きを知性的機能と結びつける研究の中で、プロティノスにおける「型」や「痕跡」の機能をより全体的な視点から彼の思想の中で位置づけて究明していく必要性を意識することとなった。
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Proceedings of ICA 2016, Seoul National University
巻: 1 ページ: 460-464