20世紀の最重要作曲家のひとりアンリ・デュティユーの5つの管弦楽作品(《第2交響曲》《メタボール》《遥かなる世界が》《音色・空間・運動》《瞬間の神秘》)について、スケッチ研究と理論研究を循環させることで主に次の結果を得た。これらは「独立独歩」という従来のデュティユー・イメージを覆す。①アンチ・セリアリストと見なされてきたデュティユーが実はセリアリスムのアイデアに深く関わったこと。②デュティユーにおけるシステムと自由の問題は12音音列をピッチ構造の母体としていかに柔軟に使用するかという問題に帰着すること。③上記5つの作品は、同問題への準備、着手、発展的解消の記録して読み解くことができること。
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