研究課題/領域番号 |
15K02123
|
研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
近藤 存志 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (00323288)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ニコラウス・ペヴスナー / 社会改良 / デザイン史 / 中世主義 / 芸術文化史 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、20世紀を代表する建築史・美術史・デザイン史研究者ニコラウス・ペヴスナーの、社会改良の実現を視野に入れた芸術文化研究の全容を解明し、これまで注目されることのなかった社会改良家としてのその実像に迫ろうとするものである。 平成27年度は、1)ペヴスナー批判の系譜、2)ペヴスナーによる中世的精神の近・現代的意義に関する主張、3)ペヴスナーによる第2次世界大戦後の英国デザイン界・デザイン産業への社会改良的提言、4)ペヴスナーのプロテスタント・キリスト教観と芸術文化的関心の連関性、といった観点に注目しながら資料収集を行うとともに、一部成果を発表(発表済み1件、発表内定1件)した。 具体的な研究成果の発表は、米国・サンフランシスコで開催されたデザイン史学会(Design History Society)2015年度年次大会において、「中世における芸術創造行為のあり方」の中にモダン・デザインの発展と展開に必要不可欠な「規範としての価値」を見出そうとしたペヴスナーの近代的中世主義の芸術観について、‘To Design Well is a “Moral Duty”: Nikolaus Pevsner's Modern-Medievalist Appraisal of Design’と題して行った。 また本年秋には、台湾・台北で開催される第10回国際デザイン史・デザイン学会議(The 10th International Conference on Design History and Design Studies)において、第2次世界大戦後の英国において広く市民の芸術文化的素養を向上させることで社会改良を模索したペヴスナーの社会改良的精神に関する発表を行うことにしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題との取り組みは、おおむね順調に進んでいると考えている。本研究課題にかかわる基礎資料の収集は、ほぼ終了した。今後は、本研究課題を遂行するにあたって注目している4つのテーマ(観点)―1)ペヴスナー批判の系譜とその反証の試み、2)ペヴスナーによる中世的精神の近・現代的意義の強調と〈日用の美〉をめぐる芸術文化史的考察、3)第2次世界大戦後の英国デザイン界・デザイン産業への提言とペヴスナーの社会改良的精神、4)ペヴスナーのプロテスタント・キリスト教観と社会改良家としてのモダン・デザインの提唱―に関する考察と執筆を進めるとともに、その過程で新たに見出された、そして見出されるであろう、必要資料を順次収集していく。 研究成果の発表については、平成27年度は海外での学会発表を1件行った。平成28年度は、海外での学会発表を2件、国内での学会発表を1件予定している。今後予定されているこれらの学会発表は、現時点で発表が内定もしくは発表者の選抜に応募中の状態にあり、本研究課題に関する研究成果の発表は総じておおむね順調に準備が進んでいると考えている。今後は、そうした発表内容を学術論文として出版することに力を注ぎたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、本研究課題を遂行するにあたって注目している4つのテーマ(観点)―1)ペヴスナー批判の系譜とその反証の試み、2)ペヴスナーによる中世的精神の近・現代的意義の強調と〈日用の美〉をめぐる芸術文化史的考察、3)第2次世界大戦後の英国デザイン産業への提言とペヴスナーの社会改良的精神、4)ペヴスナーのプロテスタント・キリスト教観と社会改良家としてのモダン・デザインの提唱―について追加的な資料収集を継続するとともに、個々のテーマに焦点を絞って考察を進めていく。それと同時に、今後はより一層研究成果の発信に力点を置き、国内、国外の学会において発表していく予定である。具体的には、平成28年度は計3件の学会発表を予定している。まず、7月末に京都精華大学を会場に開催される意匠学会研究大会において「ドレスデンのペヴスナー―表現主義におけるヨーロッパ中世主義の〈精神〉」と題した発表を行いたい(5月現在応募中)。また9月に英国のミドルセックス大学を会場に開催されるデザイン史学会(Design History Society)2016年度年次大会において‘Die Bruecke between Time and Design: Young Pevsner's Expressionist Search for Timeless Criteria in Good Design’と題した発表を行いたいと考えている(5月現在応募中)。続く10月には、既述の第10回国際デザイン史・デザイン学会議での発表(「研究実績の概要」および「今後の研究の推進方策等(次年度使用額が生じた理由と使用計画)」の欄を参照)を予定している(発表内定済み)。 また平成28年度は、本研究課題にかかわる研究成果についての口頭発表の内容を加筆、編集のうえ、学会・会議終了後、順次論文として発表していく計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に発表を行う国際学会への参加費、旅費、諸経費(英文校閲費等)を捻出し、海外での追加的な資料収集も行えるようにするために、本年度の科研費を一部繰り越せるように努めた。このことに関連し、当初平成27年度に予定していたノート型パソコン(TOSHIBA dynabook T954)の購入を、次年度以降に見送ることにした。今後も、本研究課題の成果を海外学会・国際会議において発表することを優先し、必要に応じて使用額・使用計画の見直しを行う可能性がある。
|
次年度使用額の使用計画 |
9月に英国のミドルセックス大学を会場に開催されるデザイン史学会(Design History Society)2016年度年次大会において‘Die Bruecke between Time and Design: Young Pevsner's Expressionist Search for Timeless Criteria in Good Design’と題した発表を行う計画である(5月現在応募中)。また10月には、第10回国際デザイン史・デザイン学会議(The 10th International Conference on Design History and Design Studies)において、‘Anomy in Design: Sir Nikolaus Pevsner's Admonition to“Democratic”Society’と題した発表を行う予定である(発表内定済み)。加えて、夏期に追加的資料収集を海外研究機関で行う計画である。今回次年度使用額として繰り越した予算は、こうした海外での研究発表と資料収集に関係する支出として使用する計画である。
|