本研究では,被験者実験を実施し,演奏データと視線データを評価,分析すると同時に,瞳孔径などを生理指標として認知的負荷を測定することで,五線譜とタブラチュア譜の記譜法の違いが,演奏時の認知的負荷や処理資源の配分に与える影響を考察し,演奏における認知過程を明らかにすることを目的としている. そして,本研究は,被験者実験のための実験システムを構築,実験課題・条件を立案し,実際に実験を遂行し,そのデータを解析し,結果を考察するという流れで実施してきた. 1年目においては,実験システムを構築,実験課題・条件を立案し,実験を開始したが,2年目においては,予備実験の結果を踏まえて,実験課題など,実験計画について再検討してたうえで,本実験を開始した.3年目においては,それらの実験を継続し,実験データについての解析を行ったが,それまでの学会での講演発表の際の質疑応答,他の研究者とのディスカッションを踏まえて,追加の実験を行い,解析を行うことにより,より精緻な研究成果が得られると判断して,期間延長の申請を行った. 延長期間である平成30年度においては,リュートおよびギター奏者の小出智子氏の協力のもと,追加実験を実施し,データ解析をするとともに,これまでの実験データの演奏に対する評価も行い,考察に反映させた.また,いくつかの関連する学会に参加して,これまでの研究結果について発表し,質疑応答や他の研究者とのディスカッションを行い,考察を深めることができた.
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