研究課題/領域番号 |
15K02126
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研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
橋田 光代 相愛大学, 音楽学部, 講師 (20421282)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 音楽経験 / 音楽システム・ゲーム / 音楽タイピング |
研究実績の概要 |
本研究は、人間の音楽経験の度合いや知識のレベルと、音楽の演奏や楽曲制作・編集において必要な技能と人間の振る舞いについて、その関係を明らかにすることを目指すものである。 今年度は、音楽経験者である筆者の視点から、既存の音楽生成システムについて、利用者としての視点から、システム利用に必要な操作法や音楽的スキルの検証を進めた。 音楽システムを利用するには、楽器演奏の技術的スキル、楽譜(五線譜やピアノロール)に対する 読譜力、音響信号からの音符列や音色・音源の聴取力、"良い"作品・演奏を表現するための創作力のいずれかが必要となる。そのコンセプトやシステム設計の段階で、どこまで利用者の音楽的スキルを想定できているかは、開発者自身の音楽経験に依存する場合が多いと考えられる。そこで、調査対象となる音楽誌生成システムを、まずは先行研究にて開発された演奏デザイン支援システムや指揮演奏システムの他、インターネット等で入手可能な関連研究システム・音楽アプリケーションに定め、各システム・アプリが、演奏・読譜・聴取・創作のいずれを目的とし、またそのためにどのスキルを必要とするかについての分類と整理を進めた。調査・分類は次年度も継続的に実施する。 合わせて、音楽アプリケーションを広く一般に提供あるいは利用する者が一堂に会する、ゲーム開発者のカンファレンス(CEDEC)や音楽教育学会において、動向調査並びに本研究級の問題意識を共有するための口頭発表を行うとともに、音楽的スキルの利用を念頭に置いたタイピング練習ゲームを提案し、エンターテイメントコンピューティングにおいてデモンストレーションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去に学術発表されてきた音楽演奏支援システムについては本研究課題開始時点で入手済みであるため、スムーズに定性的な利用分析に入ることができ、その成果の一部を音楽教育学会において発表できた。その後はスマートフォンを中心とした音楽アプリケーションの収集は順調であり、それらの分類と整理も進めている。また、アプリケーション調査の一方で、音楽的スキルを念頭に置いたゲームシステムを発表したところ、キーボードのタイピングリズム、文字入力、楽曲メロディにおけるリズムとの関係性についての新たな視点について参加者らからの賛否両論を得られた。本ゲームを通じて本研究課題における問題意識を参加者らと共有できたことは有意義であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
スマートフォンを中心とした音楽アプリケーションは簡易的に検索するだけでも数千を超える。その全てを集積するのはほぼ不可能であるが、可能な限り数が集まることで、音楽アプリケーションの分野全体としての様相・現状が明らかになると期待される。この調査は次年度以降も積極的に実施する。これに関する論文・学術発表も順次行う予定であるが、より社会一般に向けて効果的に知見を紹介していくことを踏まえ、一連の調査経過を可視化したWebページの制作に取りかかっていきたい。 合わせて、音楽未経験者のシステム使用時の振る舞いに関する調査を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の動向調査及び、研究者・識者との情報交換を目的に当初計上していた国際会議・国内会議旅費の一部及び謝金について、本務の重要日程と重なったため見送ることとなった。また、音楽ソフトウェアの調査においては、先に、本課題開始時点で入手済み あるいは 無償のものから実施している。有償ソフトウェアについても追って調査を行うが、1件あたりの購入額が平均的に極めて少額であることから事務手続き上の調整を要したため、次年度に送ることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議への論文投稿並びに論文誌への投稿を予定しており、それに伴なう費用が発生する。合わせて、有償ソフトウェアを対象とした音楽アプリケーションの調査、識者・研究者らとの情報交換・議論を活性化させる予定である。
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