本研究は、人間の音楽経験の度合いや知識のレベルと、音楽の演奏や楽曲制作・編集において必要な技能と人間の振る舞いについて、その関係を明らかにすることを目指すものである。 前年度に引き続き、既存の音楽生成システム並びにスマートフォンを中心とした音楽アプリケーションを対象として、音楽的能力を要する機能の検証を進めた。今日の音楽アプリにおいては,端末自体が世代を問わず所有するほどの普及率から,子供や初心者を対象とするリズム学習や音感トレーニング,楽器ライブラリ,音楽理論学習を目指した教育系ツールが日々リリースされている。一方で、人工知能や機械学習ベースでコンピュータが自律的に自動作曲を行う技術開発も進んできた。音楽シーンにおいて人間が積極的にシステムを活用する目的が、(1)音楽的能力を育てることか、(2)手軽な音楽制作を出来れば良いかによって、システムに求める機能を適切に設計することがより重要になってきていることがわかってきた。
関連して、音楽的知識の活用が最大限求められる場面での人間の振る舞いについて、複数のピアノ奏者を対象として、楽譜に対する演奏解釈とその表現に対応する演奏約350曲分の収録を行い、その分析を進めた(共同研究:課題番号16H02917)。プロ演奏者が研究対象となるが、演奏データの収録と合わせて一個人の音楽に対する知識・経験の言語化において多くの知見が得られており、演奏データや演奏分析・言語化の方法論について整理を進めている。以上の成果発表については、今後も学会発表等を通じて行っていく予定である。
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