研究課題/領域番号 |
15K02127
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
橋本 啓子 近畿大学, 建築学部, 准教授 (20610570)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 商環境デザイン / インテリア・デザイン / 伊藤隆道 / ジャンル解体 / インテリア・オブジェクト / 境沢孝 |
研究実績の概要 |
日本の1960年代の商環境デザインにおける同時代美術の研究として、造形作家の伊藤隆道が行ったインテリア・オブジェクトの試み、および建築家の境沢孝の商業インテリアについて文献悉皆調査ならびに聞き取り調査を行い、それらが商業美術にもたらした意義を考察した。1960年代に始まった美術・建築・デザインのジャンル解体の運動は、実験的な商環境デザイン(店舗のインテリア・デザイン)が生まれる土壌を作り出したが、東京芸大で金工を専攻し、カルダーのモビールに影響を受けた伊藤隆道は独特のモビール彫刻により「ジャンル解体の具現化」の恰好の例を提示する。銀座の資生堂のディスプレイから始まった伊藤の「動く彫刻」は、1970年代初頭には、著名な高層ビルや公共施設のロビーのほとんどを飾るなど、「インテリア・オブジェクト」を確実に商環境に浸透させた。「インテリア・オブジェクト」は山口勝弘の光やプラスチックの造形とともに1970年代に「環境芸術」という美術カテゴリー名を与えられるが、それは同時に、彼らの作品がジャンル解体という実験から、美術という確立された地位に移行したことを意味した。 商環境におけるジャンル解体は、美術家だけでなく、デザイナーたちによっても行われるが、境沢孝は倉俣史朗とともにその動きの両輪のひとつを担った。境沢と倉俣のインテリアは、空間として構想された空間というよりは、オブジェとして構想された空間ともとらえられ、その背景には山口や伊藤の影響があるだろう。伊藤と境沢のインテリアについては本格的な研究の例がなく、作家本人へのインタビューも含めて今回、貴重な研究ができた。現在もなお活躍する伊藤は2017年12月に資生堂のインスタレーションの再現を行うなど、過去のインテリア・オブジェクトが注目を浴びており、その分析である本研究は造形史に新たな知見をもたらすと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年1月に短期間入院し、その後、回復に数か月かかったため、研究に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は境沢孝について国際学会で発表するとともに、内田繁、杉本貴志についての取材を行い、論考を発表する。1960年代の商環境と美術の交流に関する主要なインテリア・デザイナーである境沢孝、内田繁、杉本貴志については作品リストのアーカイブを作成し、美術家の山口勝弘、伊藤隆道が手掛けた商業インテリアについてもアーカイブを作成、今後の商業インテリア研究の一助となるよう、何等かの方法で公開する。日本のデザインは海外からきわめて注目されているため、発表はなるべく英語で行う。報告書は日英の両言語で作成予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年1月に手術・入院し、その後回復に数か月かかった。さらに2017年秋から親族が入院し、介護の必要が生じた。これらの理由により、研究に遅れが生じたため、当初の最終年度である2017年度内に研究をすべて執行できなかった。そのため、1年間の研究期間延長を申請した。
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