本研究は、身体を媒体とする舞踊表現について、集団によって演じられる「群舞」が、近代日本における西洋受容との関わりの中でどのように生まれ、社会的・政治的な要因と関わってその意味と実際の形が変化していったのかを、大正期から昭和戦前期に宝塚少女歌劇や松竹楽劇部、私的な舞踊研究所において新舞踊を多く発表した楳茂都陸平を対象に、彼の言説に加え、舞踊譜に基づいて舞踊作品を再現することにより、群舞の理念が実際の作品上にどのように具現化されたのかを明らかにすることを目的としている。 これまで平成27年度には主に関連文献の収集と整理、舞踊譜解読のための準備、28年度には舞踊譜の解読と《ソナタ・アパッショナータ(熱情奏鳴曲)》については解読した舞踊の再現に向けた準備を行い、29年度は解読した舞踊を舞踊手に振付けし音楽を伴った再現演舞を行った。またそれに基づいて作品の特徴を分析し、その結果の一部を第69回舞踊学会大会で発表した。 最終年度に当たる平成30年度は、上記の実績・成果を踏まえて、12月8日(土)に第70回舞踊学会大会(於:お茶の水女子大学)において、「楳茂都陸平の舞踊譜に見る《ソナタ・アパッショナータ(熱情奏鳴曲)》の振付」と題して、再現した映像を用いながら作品全体の特徴を考察し発表を行った。また1920,30年代の新しい舞踊を研究する海外の研究者と意見交換を行い、中でもザルツブルグ大学の舞踊学研究者Nicole Haitzinger(ニコール・ハイツィンガー)博士が代表として企画を進めている1920-30年代のウィーンと日本のダンスをテーマとする研究コンファランス(2019年19月・於ザルツブルグ大学)における発表の計画を進めている。加えて本研究成果を中心とした楳茂都陸平の新舞踊に関する研究を本年度中に東京大学大学院人文社会系研究科博士論文(文化資源学専攻)に提出する予定である。
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